フリーキー・ラブ!

2001/06/07 日仏学院エスパス・イマージュ
男ひとりと女ふたりがホテルの部屋で繰り広げる心理劇。
ドワイヨン監督が娘主演で撮った青春映画。by K. Hattori

 『ポネット』が日本で大好評だったジャック・ドワイヨン監督の最新作。麻薬の代金を回収しようと裕福な学生のもとに向かったアレックスは、相手が次の仕送りまで無一文だと知ってがっくり。現場にいた学生の恋人フレッド(女性です)はアレックスの乱暴な態度に腹を立てた様子だったが、何を考えたのかその直後にアレックスに連絡してきて「あなたが好きになった」などと訳の分からないことを言い始める。アレックスは彼女とクラブに出かけてシルヴィアという少女をナンパし、3人でホテルのスウィートに一泊することになる。

 アレックス、フレッド、シルヴィアの3人を中心に、ホテル内での台詞のやりとりが延々続く映画。「男ひとりに女ふたりでいつか3Pが始まるに違いない。ヒッヒッヒッ」と期待していても、いつまでたっても何も起こらない。そこにあるのは言葉のキャッチボールと、互いの手札を隠した心理的ポーカーゲームみたいなもの。人物の言葉の投げ合いや人物の出し入れなどは、かなり舞台劇に近い雰囲気だと思う。この脚本はちょっと手直しすれば、そのまま舞台劇になるだろう。(案外もともとが舞台劇だったのかもしれない。)

 アレックスを演じるギヨーム・ソレールはこれがデビュー作という新人。むしろ映画の主役は、彼と一夜を過ごす(でも何も起きない)ふたりの女たちなのだろう。何考えてるのかさっぱりわからないフレッドを演じているのは、監督の娘であり映画『デルフィーヌの場合』にも主人公の親友役として出演していたルー・ドワイヨン。母親はジェーン・バーキンという、フランス映画界のサラブレッドです。シルヴィア役のキャロリーヌ・デュセイは『ロマンスX』のキャロリーヌ・デュセイ。

 僕がこの映画に入り込めなかった理由のひとつは、この3人のうち誰の視点でこの映画が描かれているのか、さっぱりわからなかったことにある。物語全体の中心になるのはチンピラ青年のアレックスだが、心理的葛藤の中心にいるのはフレッドであり、目の前で繰り広げられる出来事を第三者の視線で客観的に見ているのはシルヴィアだろう。観客の視点に一番近い視点の持ち主はシルヴィアだが、彼女はこの映画の中でアレックスとフレッドの葛藤の外側に立っているため、物語の中に積極的に入っていくことはない。アレックスは確かに主役的な立場にいるが、周囲の状況にいかようにも流されていくため、物語の芯にはなっていないと思う。フレッドは最初から最後まで何を考えているのかよくわからないが、物語が彼女から始まり彼女で終わることも含めて、彼女あってこそのこのドラマだと思う。この映画は3つの重心が互いに不安定な影響を与えながら、ヨタヨタと蛇行しながら頼りない目的地に向かって飛んでいく。

 ホテルの部屋にフレッドの恋人が用心棒を連れて乗り込んでくるところなど、わくわくするような皆無とも言い切れないのだが、上映時間1時間37分は総じて退屈。コンセプト重視の作品で、観客へのサービスはない。

(原題:CARREMENT A L'OUEST)

2001年6月21日12:30上映 パシフィコ横浜・会議センターメインホール
(第9回フランス映画祭横浜2001)

ホームページ:http://www.framework.jp/france2001/
http://paris.infossimo.com/
http://www.elle.co.jp/fr/
http://www.marieclaire-japon.com/france2001/
http://www.nifty.ne.jp/fanta/france2001/



ホームページ
ホームページへ