チェブラーシカ

2001/05/29 シネカノン試写室
旧ソ連時代からロシア人に親しまれている国民的キャラクター。
最近のハイテク人形アニメと比べるのは気の毒。 by K. Hattori


 旧ソ連で作られていた子供向けの人形アニメ。サルだかクマだかよくわからないチェブラーシカというキャラクターは、ロシアでは子供から大人まで知らぬ人のいない、日本で言えば“ドラえもん”みたいな人気キャラクターなんだそうです。今回上映されるのは、1969年から'74年にかけて作られた、それぞれ20分の短編作品が3本。全部あわせても1時間という、ごくささやかな映画なのです。技術的には最近の『ウォレスとグルミット』や『チキン・ラン』などにかなうべくもない素朴で原始的とも思えるアニメですが、この超アナログな感じが、観る人をしみじみ懐かしい気分にさせてくれます。そこに今はなくなってしまった「旧ソ連」という国の面影も重なって、懐かしさは2倍になるという寸法。エドワード・ウスペンスキーの原作は何度も映画化されて、一番新しいものは'80年代に入ってから作られているというが、それは今回の上映に含まれていない。なんでこんな映画が今日本で公開されるのかさっぱりわからないが、なにが出てくるかわらからない「福袋」のような楽しさが、映画の世界にはあるものです。

 第1話『こんにちはチェブラーシカ』は、主人公チェブラーシカが南国の果物の箱に入ってロシアにやってきて、わにのゲーナと友達になるお話。チェブラーシカは動物園に連れていかれるが、学問上の分類が不可能という理由からそこを追い出されてしまう。動物園で働くわにのゲーナは、仕事から帰った一人暮らしの部屋で寂しさを紛らせるため、友達募集の張り紙を作って町中に張り出す。それを見たチェブラーシカはゲーナと友達になり、さらに大勢の友達を招くために家を造ります。このエピソードで面白いのは、動物園の動物たちが昼間は動物園の檻の中で「動物を演じている」という設定。わにもライオンもキリンも、閉園時間後や休園日は動物たちが動物園から外に出て、それぞれのアフターファイブを楽しむのです。これはすごくユニークなアイデアです。

 第2話の『ピオネールに入りたい』は、チェブラーシカが町で活動するピオネールの子供たちに「仲間に入れてほしい」とお願いする話。ピオネールというのは10歳から15歳までの子供たちからなるボーイスカウトのソ連版みたいな組織で、お揃いの制服を着て町の中でボランティアや社会活動をするものらしい。ちなみに7歳から9歳まではオクチャブリャータとい別の組織があり、14歳から28歳までの青年層にはコムソモールという組織があったとか。共産主義教育のためのこれら組織は、ソ連解体とともに活動停止あるいは消滅し、現在はボーイスカウトやガールスカウトが作られているという。このエピソードは物語そのものより、こうした旧ソ連の生活ぶりが描写されているのが面白かった。

 第3話の『チェブラーシカと怪盗おばあさん』は、いじわるばあさんのシャパクリャクが大活躍するエピソード。密猟者が悪役で登場するが、その顔つきはモンゴロイド系の少数民族じゃないのかな。

2001年7月21日公開予定 ユーロスペース
配給:プチグラパブリッシング 宣伝:FRAP
ホームページ:http://www.cheb.tv/


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