スタン・ブラッケージ作品集
BRAKHAGE EYES

2001/05/21 映画美学校試写室
『DOG STAR MAN』のスタン・ブラッケージ監督の短編集。
出産あり、腐る犬の死体あり、検死解剖あり。 by K. Hattori


 代表作『DOG STAR MAN[完全版]』が昨年ようやく公開された、スタン・ブラッケージの短編作品集。'58年から'71年にかけて作られた7本の短編作品を、AとBの2つのプログラムに分けて上映。劇場ではこれに加えて、『DOG STAR MAN[完全版]』をCプログラムとして上映するが、今回試写が行われたのは7本の短編のみ。以下各作品について、簡単に感想を述べる。

 まずはAプログラム3本。'65年に製作された7分のモノクロ短編『FIRE OF WATERS』は、今回上映された中では唯一の音入り作品。闇に包まれた住宅地に時折閃光がきらめき、家の屋根や家並みがシルエットで浮かび上がる。この閃光は雷だろうか。夜は白々と明け、また闇の中へ。最後は1軒の家が映し出され、動物の鳴き声かセックスの嬌声のような音で終わる。なんだかよくわからないけど、最後まで観てしまう。2本目の『窓のしずくと動く赤ん坊』は、'59年にブラッケージが自分の妻の出産シーンを記録した12分のカラー作品。この映画はすごくいい。一組のカップルが新しい命の誕生を迎えるときの喜びと驚きが、短い映画の中でじつに見事に描き出されていると思う。破水して子供の頭がゆっくりと出てくる場面をクローズアップで撮影しているため、当然ながら女性器のアップが画面にでかでかと映る。幸いなことにボカシはなし。3本目は'58年に作られた40分の映画『夜への前ぶれ』。薄暗い空とそこに黒いシルエットを浮かべる木々が延々映し出され、赤ん坊の姿や子供たち、ライトアップされた遊園地などが時折挿入される。最後は映画を撮影している男が、木の枝にロープをひっかけて首をつる。この3本がAプログラム。

 Bプログラムは'60年にパリの墓地を撮影した『THE DEAD』という11分の作品で始まる。ネガとポジを微妙にずらしながら重ね合わせる手法が面白い。'59年に作られた『思い出のシリウス』は、事故で死んだ飼い犬の死体が草むらの中で朽ち果てていく様子を、長い月日に渡って記録した11分の作品。生きていたときの面影を残す死体が、映画の中では見る見るうちに腐敗し、有機物の残骸へと姿を変えていく。こうして死を記録するのが、作者なりの死との対決方法なのだろう。3本目の『MOTHLIGHT』は、フィルムの上に蝶や蛾の羽根など、様々なものを張り付けた作品。'63年製作で、上映時間は4分。そしてBプロの最後に登場するのは、死体解剖の様子を淡々と記録した『自分自身の眼で見る行為』という'71年制作の32分の作品。死体解剖の映画は以前『エデンへの道/ある解剖医の一日』というドキュメンタリーもあったので、それ自体としてはショックを受けなかった。しかし今回の映画は何の説明もなしに、ただ淡々と死体が切り刻まれバラバラに解体されていく様子を記録しているという意味で、ものすごくインパクトがある。検死事務所に運び込まれた死体は性別も年齢もバラバラ。それがあっと言う間にバラバラの肉片になってしまうのだ。う〜ん、やっぱりショックだったかも。

2001年7月7日公開予定 BOX東中野
配給:ミストラルジャパン
ホームページ:http://www.mistral-japan.co.jp/


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