恋戦。OKINAWA
Rendez-vous

2001/05/08 映画美学校試写室
沖縄の海岸リゾートを舞台にした香港製のラブコメディ。
他愛のない話だが、それが面白い。by K. Hattori


 全編沖縄でロケした香港映画。香港は今どういうわけか日本ブームなので、最近はこの映画の他にも日本でロケした『東京攻略』や『スウィート・ムーンライト』のような映画が作られている。しかし『恋戦。OKINAWA Rendez-vous』が他の映画と決定的に違うのは、この映画には日本人も日本文化もほとんど登場しないこと。この映画の“沖縄”は、日本ブームの結果として香港の観光客が訪問した“憧れの日本”ではなく、香港と目と鼻の先にあるちょっと贅沢なリゾート地として描かれている。登場人物たちは片言の日本語を喋るけれど、それは日本という土地と深くコミットしたいわけではなく、観光地で買物をしたりホテルに泊まったりするのに必要だから、そうした言葉を覚えているに過ぎないのです。つまり日本人の観光客が、海外に旅行に出かけるのと同じ感覚。『東京攻略』や『スウィート・ムーンライト』は「日本が好き!」「日本人になりたい!」という映画だったけれど、この映画は「日本に遊びに行きたい!」というただそれだけの話。もちろん多少は日本文化についての描写もあるけれど、それは味付けみたいなものです。

 日本のヤクザと恋仲になったものの、彼に愛想をつかして組の大金を奪って逃げた女ジェニー。ヤクザから仕事を受けた報酬として、その金を本来受け取るはずだった名うての大泥棒ジミー。恋人とたまたま休暇旅行で沖縄に来ていたとき、ジミーを見つけて彼を逮捕しようと罠を張る香港警察の刑事ロー。この3人が全員香港人で、喋る言葉は全部広東語。ここにからんでくる日本人も、すべて広東語が喋れたり理解できたりする。これはハリウッド映画がヨーロッパやアジアを舞台にした映画を作ったとき、現地でもすべて英語が通用するのと同じです。

 恋人がいながらジェニーに心惹かれていくローと、普段は女に冷淡なくせになぜかジェニーが気になるジミー。映画はこの3人の三角関係を軸に、ローがジミーを捕らえるためにある計画を進める様子を描く。ただしエピソードのとりまとめが未整理で、全体が散漫になっている印象は免れない。どのエピソードも面白いのだが、どの筋が本流でどの筋が支流なのか、もう少し明確にした方がよかったと思う。ローの恋人が日本のヤクザと親しくなる話なんて、僕はとても好きだけれど、本来これはもっと扱いが小さくなるべきものでしょう。間抜けな刑事と恋に盲目になっている大泥棒のつばぜり合いという犯罪コメディの要素に、好意を素直に口に出せないこじれた三角関係をからませ、さらに沖縄のリゾート案内をちょいちょいと振りまけば一丁上がりだと思うけど。

 脇のエピソードが面白すぎて本来の筋立てが弱くなっていると言うより、これはそもそも本筋が弱いのでしょう。脇のキャラの魅力や各エピソードの面白さが、この映画をかろうじて支えているような気もする。結果として面白い映画になっているんだから、これはこれでいいんだけどね。物語の印象はえらく薄いものだけれど、同じキャラを使って続編が作れそうな作品です。

(原題:恋戦沖縄)

2001年7月上旬公開予定 新宿シネマカリテ
配給:東光徳間、ツイン
ホームページ:http://www.spo-k2.co.jp/


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