ロスト・ソウルズ

2001/04/20 GAGA試写室
ウィノナ・ライダーがエクソシストの助手を演じるオカルト映画。
映画話術のTPOを間違えて失敗している。by K. Hattori


 ウィノナ・ライダー主演のオカルト映画。映画『エクソシスト』で有名なカトリックの悪魔祓いをモチーフにしているが、話の筋立てはむしろ『エンド・オブ・デイズ』というシロモノ。監督はスピルバーグ作品の撮影監督として知られるヤヌス・カミンスキーで、この映画が彼にとっての監督デビュー作になる。

 「悪魔が取り憑いた」と主張する殺人犯の要請を受け入れ、カトリック教会は悪魔祓いの儀式を実施。助手として儀式に立ち会ったマヤ・ラーキンは、かつて彼女自身が悪魔に取り憑かれ、神父たちから悪魔祓いの儀式を受けたことがあるとい経歴の持ち主だった。儀式の最中に録音されたテープや獄中で男がつけていた暗号表などから、マヤは間もなく巨大な悪がこの世に現れて世界を滅ぼすことを知る。悪に変身すると予言されているのは、ピーター・ケルソンという無神論者の犯罪ジャーナリスト。マヤはケルソンに接触してその事実を伝えるが……。

 1時間38分という上映時間は、最近の映画にしてはすごく短い部類。しかし僕はこの作品が何を描こうとしているのか、さっぱりわからなかった。教会の中で今も行われている悪魔祓いの儀式は、映画『エクソシスト』が詳細に描いているから今さら同じことをするまでもない。無神論者が巨大な悪に出会って信仰に向かうエピソードも、『エクソシスト』の中で描かれている。いったい『ロスト・ソウルズ』の新しさはどこにあるのか。この映画の中では「間もなく巨大な悪が現れて世界を滅ぼす」という主人公の意見を、教会が否定する場面がある。世界を創造した神と同等の力を持った悪魔という考えはマニ教的な二元論で、悪魔も含めて万物を神が創造したという教会の正統信仰からははずれた異端。理屈はわかる。しかしこの映画は、別にそれがテーマになっているわけでもなさそうだ。結局僕は、この映画が何を描こうとしているのかさっぱりわからなかった。何がそんなに恐いのか。いったい何が起こりつつあるというのか。

 たぶんこの話は、もっと単純なB級オカルト活劇映画として作るべきだったのだろう。悪魔に取り憑かれる予定の男ケルソンにそこそこ名の知れた俳優をあてがって、マヤ役は物語を進めるための狂言回しにする。ケルソンが信仰とは縁遠い男であることや、マヤが神父の手伝いをしつつも聖職者ではない(女性は聖職者になれないから当然だけど)ことは、観客がこのふたりに感情移入する際の手助けになるはず。観客がケルソンに十分感情移入していればこそ、この結末がショッキングなのだ。しかしこの映画は、そうした展開にならない。撮影監督としてオスカーを受賞した監督は、この映画をB級のオカルト・スリラーではなく、A級の文芸作品として撮ろうとしてしまった。これは明らかな間違いなのです。

 どんなに高級な食材をトッピングしようが、インスタントラーメンはしょせんインスタントラーメンです。B級なのです。ジャンクフードなのです。分際をわきまえた作り方にすれば、もっと楽しめた作品だと思うけど。

(原題:LOST SOULS)

2001年6月公開予定 全国東宝洋画系にて公開
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
ホームページ:http://www.lostsouls-jp.com/


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