シックスパック

2001/04/16 メディアボックス試写室
フランス製の猟奇犯罪サスペンス映画だけど……。
なんだか中身がスカスカという印象。by K. Hattori


 一人暮らしの女性を路上で待ち伏せし、鋭利なナイフで刺殺する事件が発生。手口が過去4件の事件とまったく同じことから、警察は同一犯による連続殺人事件と断定。被害者の行動パターンや周辺の地理を入念に調べ上げ、証拠もまったく残さない犯人。遺体はレイプされているが、この入念な行動は衝動的な性衝動に駆られたものではない。遺体の破壊やレイプは、犯人が自分の犯罪を誇示するための“自筆署名”のようなもの。犯人は純粋に殺しを楽しんでいる。主任刑事ナタンはこの手の快楽殺人がフランスに珍しいことから、犯人が外国人である可能性を考える。ナタンは元FBI捜査官と連絡を取り、自分たちの追っている犯人がアメリカで10件の殺人事件を起こした“シックスパック”とあだ名される男であることを知る。シックスパックは2年ほど前に最後の殺人を犯し、その後は足取りが消えている。フランスで事件が起き始めたのはおよそ1年半前。時期的にもぴたりと符合する。だが犯人はどこにいるのか?

 原作はフランスでベストセラーになった、ジャン=ユーグ・オペルのミステリー小説。監督・脚本は『カンヌ映画祭殺人事件』『パパラッチ』のアラン・ベルベリアン。ベテラン刑事ナタンをリシャール・アンコニナが演じ、若い刑事を『TAXi』シリーズのフレデリック・ディーファンタルが、捜査に協力する若い女をキアラ・マストロヤンニが演じている。

 映画の冒頭に5件目の犯罪シーンが描かれ、犯人の顔が観客の前に提示される。だからこれは、犯人探しのミステリー映画とはちょっと違う。この映画でミステリーになるのは、主人公たちに犯人捜査のプレッシャーをかけつつ、捜査にはまったく非協力的な警察上層部の不審な行動がなぜ起きるのかや、脅迫めいた露骨な捜査妨害を行う者の正体とその理由は何なのかといった部分。しかしこのミステリーは、あまり映画を引っ張る力になっていない。だとすればこの映画の魅力はどこにあるのか。本来は刑事コンビの人間的な魅力がこの映画を引っ張らなければならないのだろうが、あいにく僕はこの映画の主人公たちに魅力を感じられなかった。これは登場人物ごとのエピソードが不足しているためであり、そのエピソード不足を補うだけの存在感が、役者の側になかったためでもある。『パパラッチ』の監督にしては、ずいぶんとつまらないところで失敗したものだ。

 若い刑事ソールを演じているのが『TAXi』のバカ刑事と同じ役者なので、どうしてもそのイメージが強すぎて「ハイテク装備の切れ者刑事」には見えないという欠点もある。ナタンとソールのコンビが、どう考えたってチグハグなのだ。このふたりのキャラクターは、やはりもっとエピソードを細かく付け加えていった方がよかったと思うけどなぁ。映画の結末も後味が悪いし、あの決着の付け方には納得もできない。なぜナタンは捜査妨害を受けなければならなかったのか、最後に観客が「なるほど」と納得できるオチが欲しかった。

(原題:SIX-PACK)

2001年6月上旬公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:コムストック 宣伝:FREEMAN
ホームページ:http://www.comstock.co.jp/


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