デュカネ
小さな潜水夫

2001/03/28 徳間ホール
海に沈んだ50年前のUボートを見つけた兄弟の冒険。
子供たちを主人公にしたデンマーク映画。by K. Hattori


 夏休みを祖父の家で過ごすことになった兄弟が、50年以上前に近くの海に沈んだというナチスの潜水艦を発見し、潜水艦探しに躍起になっている悪党たちと対決するというデンマーク映画。思春期を迎えた兄クリスチャンと弟アスクの絆。長年海で暮らしてきた祖父の海に対する畏敬の念。兄クリスチャンと地元の少女マヤの恋。祖父と骨おばさんことランスコウ夫人の粋な関係。兄弟の母の息子たちへの思い。こうした日常描写をきちんと行った上で、そこにナチスの遺産や幽霊、潜水艦の中のお宝を引き上げようとする腹黒い男たちの陰謀といった話をからめていく。物語はすべて子供たちの視点から描かれているし、子供の視点からの映画だからこそ許される危なっかしい描写も多いのだが、小学生や中学生の男の子が観れば、結構夢中になれる映画だと思う。

 潜水艦に積まれていた荷物が結局何だかよくわからないという問題があって、それがこの映画の最大のネックになっている。潜水艦を探し回っているエリックという男の肩に、ナチスの刺青があったのはなぜか? 彼は潜水艦の中の秘密を使って、いったい何をしようとしているのか? 手段を選ばぬトレジャーハンターとして悪名高い彼が、今までまるで潜水艦を探そうとしなかったのはなぜなのか? このあたりをもう少し補っていくと、この映画は大人が観てもワクワクできる冒険活劇映画になったと思う。エリックはナチスの影を引きずる、生きた亡霊です。その彼が、海底のUボートから別の亡霊を引き上げようとする。子供たちは亡霊をちゃんと成仏(?)させてやらなければならない。過去を生きる亡霊としてのナチスやUボートやエリックと、これから人生を歩み始めようとする兄弟の対決。そこにエリックと同年輩でありながら過去にしがみつくのではなく、幼い兄弟の世代に道を開こうとする祖父がからんでくる。人物配置は明確なのに、それがうまく物語の中で生かされていないのはちょっと残念だと思う。

 海中撮影やUボートのセット、幽霊の特殊撮影など、それなりに手間のかかっている映画です。出演者の中では、祖父役のオットー・ブランデンブルグが素晴らしい。演技の硬い子役たちを束ねて、見事に映画を引き締めます。「ここをもう少し何とかすれば」と思わせる点の多い映画ですが、脚本のアナス・トーマス・イェンセンは『ミフネ』や『キング・イズ・アライブ』などを書いている若手有望株。ひょっとしたら脚本段階ではもっといろいろなエピソードがあったものを、撮影段階や編集段階で兄弟ふたりのエピソードに絞り込み、あとは割愛してしまったのかもしれません。

 子供たちの話としてこの映画を観ていくと、クリスチャンとマヤの恋の行方や、兄に対抗心を燃やしてあえて無鉄砲な行動をとるアスクの心の動きがかなり丁寧に描かれているのがわかる。あくまでも子供たちを追いかけている分には、この映画のアラもあまり目立たないのかもしれない。よくできた子供向けの映画です。

(原題:DYKKERNE)

2001年7月公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給:M3エンタテインメント 宣伝:P2
ホームページ:http://www.m3e.co.jp/dy.movie/


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