ギフト

2001/03/27 ル・テアトル銀座
ケイト・ブランシェット主演のサイキック・ミステリー映画。
B級のモチーフをサム・ライミがA級に仕上げた。by K. Hattori


 サム・ライミ監督の新作。主演は『エリザベス』のケイト・ブランシェット。主人公アニーは事故で夫を失い、3人の子供を抱えて苦しい生活をしている。役所からの生活費給付だけではとても食べていけず、彼女は自宅で占い師のようなことをしている。彼女には生まれつき強い霊感があり、他人の過去や未来を言い当てたりすることができるのだ。だがこの力がトラブルを招くこともある。夫の暴力に怯えるヴァレリーの相談を受けたところ、彼女の夫ドニーはアニーを逆恨みして執拗な嫌がらせを始める。そんな時、アニーの息子の教師ウェインの婚約者ジェシカが失踪する。ウェインとジェシカの父親は、アニーの評判を聞いて相談にやってくるのだが……。

 『死霊のはらわた』や『ダークマン』『キャプテン・スーパーマーケット』などのライミ作品が好きな人にとって、『シンプル・プラン』や『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』など最近のライミ作品は「いい映画だけど期待しているものとは違う」という印象を強く残すものだと思う。今回の『ギフト』はサイキックパワーを持った女性が主人公ということで、映画を観る前は「これは久々にB級パワー炸裂か?」と期待を膨らませていたのだが、意外なことに普通のミステリー映画になっていた。これはこれで構わないけれど、「ライミがこんな映画を撮らなくてもなぁ」と思うのは僕だけではないと思う。ライミの次回作は『スパイダーマン』らしい。これに期待だ!

 『ギフト』というタイトルは、ヒロインのアニーが持つ生まれつきの能力を指している。脚本を書いたのは『スリング・ブレイド』でアカデミー賞を取っているビリー・ボブ・ソーントンと、彼の友人の脚本家トム・エパーソン。ヒロインが超能力で難事件を解決するなんて、どう考えてもB級映画のモチーフ。ところがこの映画は出演者がやけに豪華だし、ライミの演出がヒロインの生活描写を中心にしたものになっているため、超能力をテーマにした映画が持つチープな感じがあまりしない。この映画に登場する超能力は、日常の風景に自然に溶け込んでいる。しかしあまりにも自然に溶け込んでいるため、この能力を持っているがゆえに生じるヒロインの苦悩や悲劇というものまで、日常の中に溶け込んで目立たなくなっているような気もする。このあたりは痛し痒し。

 それにしても出演者が豪華すぎる。脇役が豪華すぎて、ケイト・ブランシェットが埋没しかかっているような気もするけど……。暴力亭主ドニー役にキアヌ・リーヴス、その妻ヴァレリー役が『ボーイズ・ドント・クライ』のヒラリー・スワンク、教師ウェインを演じているのが『恋愛小説家』のグレッグ・キニア、ヒロインを慕う自動車整備工バディを演じているのは『プライベート・ライアン』『60セカンズ』のジョヴァンニ・リビシー。これだけの俳優を自由自在に使えるなんて、サム・ライミも大物になったものです。ちょっとびっくり。

 占いにESPカードを使うというアイデアは面白い。劇場の売店に置いておくと、結構引き合いがあるかも。

(原題:The Gift)

2001年6月上旬公開予定 渋谷東急他 全国松竹東急系
配給:アミューズピクチャーズ
ホームページ:http://gift-movie.com


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