アタック・ザ・ガス・ステーション

2001/03/27 松竹試写室
退屈しのぎにガソリンスタンドを襲撃した若者4人組。
韓国映画。なかなかよくできた娯楽作。by K. Hattori


 日常に退屈した4人の若者たちが、特に明確な目的もなく深夜のガソリンスタンドを襲撃する。事務所のガラスを叩き割り、看板や自販機をぶち壊し、売上金をかっぱらって逃走した。だがそれから数日後。4人組はまたまた深夜の退屈な時間を持て余していた。誰からともなく「また暴れるか」という言葉が出る。向かった先はつい何日か前に襲ったばかりのガソリンスタンド。同じ場所を2度続けて襲われることはあるまいと高をくくっていた店長は、この襲撃になすすべもなく降参。だが店長もさすがに馬鹿ではない。今度は襲われたときの用心のため、売上金をレジとは別の場所に隠していた。金を奪って逃げようとしていた4人は、切り上げるタイミングを逸してガソリンスタンドに居座り続けることになる。

 最近次々日本に輸入されている韓国映画の1本。物語は深夜で客もまばらなガソリンスタンド。若者たちの小さな逸脱行為が、周囲の人々を巻き込んで大騒動になってしまうというアイデアに新鮮さはないが、エピソードが粒ぞろいで全体の組立もうまく、2時間近い上映時間はワクワクドキドキの連続だ。無法者にしか見えなかった4人組の過去が少しずつ明らかにされたり、この騒動に巻き込まれたアルバイト店員やチンピラたちの人間関係が少しずつ変化していく様子など、語り口としてはなかなかうまくできていると思う。この映画のユニークな点は、深夜のガソリンスタンドを周囲に開放された誰でも出入り自由な空間として設定している点にある。4人組は店員や客を次々事務所2階に監禁してしまうのだが、だからといって4人組そのものがガソリンスタンドに人質を取って籠城しているわけではない。4人組はいつだって、ガソリンスタンドから出たり入ったり自由自在。給油客の中にもスタンド内部で何が起きているのか気付かず通り過ぎる人がいるので、登場人物の顔ぶれは比較的流動的で常に変化がある。これはかなり頭がいい。

 突然現れた犯罪者たちと人質たちの関係性をコミカルに描いていくという点では、昨年公開された日本映画『スペース・トラベラーズ』と似ているのだが、映画のデキとしては『アタック・ザ・ガス・ステーション』の方が一枚も二枚も上手。小さな事件が本人たちの予想以上にエスカレートして、警察やヤクザがうじゃうじゃ登場する大事件へと発展するという点は『弾丸ランナー』や『ポストマン・ブルース』などのサブ監督作品にも通じる面があるが、最後のオチの付け方などは『アタック・ザ・ガス・ステーション』の方がスマートだし洒落ていると思う。あまりベタベタした心理描写もなく、シチュエーションの特異性とキャラクターの面白さだけでどんどん話を進めていく軽いタッチの映画です。

 『美術館の隣の動物園』のイ・ソンジェが4人組のひとりとして出演している以外は、出演者も監督も日本ではまったく知られていない人たちばかり。先入観による色が付いていない分、純粋に映画を楽しめるかもしれない。誰にでもおすすめできる娯楽作だと思います。

(英題:Attack the Gas Station!)

2001年GW公開予定 シネマスクエアとうきゅう、渋谷シネパレス
配給:松竹 問い合わせ:松竹、ドラゴンキッカー
ホームページ:http://www.attackthegasstation.com


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