恋はハッケヨイ!

2001/03/12 GAGA試写室
太めの女性たちが本格的な相撲に挑戦するイギリス映画。
ディテールへのこだわりが笑いを生む。by K. Hattori


 原題は『Secret Society(秘密結社)』というおどろおどろしいものだが、それが日本語になると『恋はハッケヨイ!』になる。悪いタイトルではないと思うけれど、『恋は〜』で始まるタイトルは多いので、もうひと工夫あってもよかったかも。邦題でもわかるとおり相撲の映画。しかも女相撲。しかも舞台はイギリスで、主人公もイギリス人。かなり怪しい設定です。

 舞台はヨークシャーの田舎町。会社をリストラされた夫を抱えたデイジーは、家計を支えるために町の感ず目工場で働き始める。そこには太めの女性だけが集まる秘密のダイエットサークルがあるという。太めのデイジーもやがてこのサークルに誘われるのだが、なんとそこはダイエットサークルではなく、社内の太めの女性ばかりを集めた秘密の相撲部だった。「太っていることを恥じてはダメ。太っていることは素晴らしいこと!」「心・技・体」「スタミナとバランス」を合い言葉に、日夜辛い稽古に明け暮れるデイジー。だがそんな妻の豹変ぶりに、夫のケンは心を痛める。相撲部の存在は秘密。だからなぜ毎晩デイジーが遅くなるのか、ケンにはわからない。やがてケンは、デイジーが宇宙人に体を乗っ取られているという妄想を抱くようになる。

 この映画の面白いところは、イギリスの缶詰工場で働く女性労働者たちがどういうわけか相撲に夢中になるという、まったく異質なものの組み合わせにある。このミスマッチ感覚に加えて、UFOマニアの妄想というさらに突拍子もない要素が加わるからオカシサ2倍。ユニークなのは、この映画の中で女たちが夢中になるのは「相撲」だけであって、それに付随する日本文化に対する興味がほとんど感じられないこと。着物は出てくるけれど、これは相撲取りのコスチュームとして必要なのであって、日本趣味の結果として着物を着ているわけではない。「イチ・ニ・サン・シ」というかけ声やしこ名などは、柔道の国際試合で審判が「マテ」「ワザアリ」「イッポン」などと叫ぶのと同じ、相撲周辺のしきたりや決まり事として理解されているようです。

 実際の大相撲は女人禁制で、女性は表彰の時すら土俵に上がることが許されない。女相撲は一種の見せ物興行として昔は実在したそうですが、スポーツ競技としてはおそらくまったく日の目を見ない存在でしょう。キワモノでありゲテモノなのです。しかしこの映画はそれを平然と無視し、女性たちに土俵の土を踏ませている。これが「相撲は男の世界」と思い込んでいた僕には、まず新鮮に映ります。これでやっていることが中途半端な相撲ゴッコなら「日本の国技をなめるな!」という反応も出そうだけれど、この映画の相撲描写は細部に至るまで妙に本格的なのです。作り手が相撲についてしっかりリサーチしていることが、画面の端々から伝わってくる。

 お話そのものは特別どうということもないのですが、主演のシャーロット・ブリテンは太めながらなかなかチャーミング。「デブ=ブス」ではないひとつの証明です。

(原題:Secret Society)

2001年初夏公開予定 シャンテシネ
配給:ギャガGシネマ 宣伝:ギャガGシネマ、スキップ
ホームページ:http://www.gaga.ne.jp

*追記:アマチュア・スポーツの種目として、女性の参加する相撲は実在するそうです。国際大会もあるらしい。


ホームページ
ホームページへ