踊るのよ、フランチェスカ!

2001/02/14 TCC試写室
低予算の『ジプシー』風バックステージ・ミュージカル。
ミュージカル・ファンは大喜び間違いなし。by K. Hattori


 ショービジネスの世界での成功を夢見たものの、恋と出産と子育てで自分自身の夢を諦めたリタ。彼女は自分自身の夢を、美しく成長した娘フランチェスカに託す。幼い頃から歌とダンスを徹底的にたたき込まれたフランチェスカだったが、強力なステージママと化した母親の期待にはなかなか応えられないのだった……。

 芸能界の舞台裏を描く、バックステージもののミュージカル映画。物語の導入部の設定は、露骨に『ジプシー』を真似ている。ではこの映画は『ジプシー』の真似やパロディかというとさに非ず。映画はこの後、バックステージものの元祖『四十二番街』めいた展開を経て、さらにショービジネスの裏側を描くメル・ブルックスの『プロデューサーズ』に至り、最後は嘘みたいなフィナーレへと突入するのだ。歌や踊りのレベルは必ずしも高くないけれど、これはミュージカル映画が大好きな人には嬉しい作品。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『恋の骨折り損』のような似非ミュージカルに落胆し、『ハート・オブ・ウーマン』や『リトル・ダンサー』のダンスシーンで心の飢餓感をわずかに癒していた僕は、この映画に大喜びしてしまいました。

 この映画からは作り手の「ミュージカル映画が大好きなんじゃ〜!」という気持ちがほとばしっている。オープニングタイトルのラテン風にアレンジされた「ハリウッド万歳」からして、「ブロードウェイの舞台裏を描いてはいるけれど、指向としてはハリウッドのミュージカル映画だよ」と言っているようです。主演のヴァーラ・ジーン・マーマンは自称「エセル・マーマンの隠し子」という巨漢のドラァグ・クイーン。映画はこれが初出演らしいのだが、「シカゴ」の来日公演にも出演していたという歌と踊りの実力の持ち主で、なかなかの芸達者だ。エセル・マーマンは今さら説明するまでもなくミュージカル「ジプシー」の主演女優。映画の中ではベッド・ミドラーの名前も出てくるが、彼女も'93年に「ジプシー」がテレビ映画化されたときに同じ役を演じている。『踊るのよ、フランチェスカ!』は「ジプシー」の設定を借りて来るにあたって、この大先輩たちに敬意を払っているわけです。(僕も今これを書きながらマーマンの歌う「ジプシー」のCDを聴いてます。)

 出演者も歌もなかなか面白いのだから、カメラワークや振り付けにもう一工夫あればさらに面白くなっただろうとは思う。この映画の中で一番振り付けがダイナミックだったのは、近所の老婆メルバ(演じているのはマーク・デンディというこれまた男性!)が公園でフランチェスカを相手に「幸福に飢えているならイエス様に求めなさい」と歌うゴスペル調のナンバーぐらい。これは文句なしに素晴らしいけれど、あとはいまいちなんだよね。最後のステージの場面も、どう考えたって「これでトニー賞はもらった!」という感じには見えないよ。本家『プロデューサーズ』はここに「ヒトラーの春」が入るから、それに比べるとパンチ不足でしょうね。

(原題:FRANCHESCA PAGE)

2001年4月28日公開予定 シアター・イメージフォーラム(レイト)
配給:巴里映画


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