東京攻略

2000/12/25 メディアボックス試写室
トニー・レオン、イーキン・チェン、ケリー・チャンが東京へ!
ボートを使った水上チェイスは迫力十分。by K. Hattori


 一時期低迷していた香港映画が、最近また元気を取り戻している。香港映画界の内部事情はよくわからないが、作られた映画からも最近の傾向は読みとれる。まず最初に特徴的なのは、若い俳優たちの台頭だろう。この映画にも主演しているイーキン・チェンは若手俳優の筆頭だし、ケリー・チャンやセシリア・チャンも有望な若手女優たちだ。それに加えて10年前に“若手俳優”として登場してきたトニー・レオンのような俳優が、現役の若手をサポートできる地位になってきたことで、俳優層に厚みが出てきている。トニー・レオンなんて『花様年華』では中年に差し掛かった不倫男を演じ、この映画では元気バリバリの秘密工作員を演じている。俳優として年季が入って、演じられる役の幅がものすごく大きくなっているのです。こうした懐の深さは、まだイーキン・チェンにはないものです。こうした俳優層の充実は、香港映画界が台湾や中国や日本から俳優を調達してくることで、さらに大きなものになっている。

 俳優が若返れば、スタッフも若返る。この映画のジングル・マ監督は、2年前に『ヴァーチャル・シャドー/幻影特攻』という若手スター総出演のSFアクション映画(香港版『ユニバーサル・ソルジャー』みたいな内容)で監督デビューした人。監督2作目が『星願 あなたにもういちど』です。今回の映画に出演しているイーキン・チェンとケリー・チャンは『ヴァーチャル・シャドー』の出演者で、セシリア・チャンは『星願』の出演者。ジャッキー・チェン作品の撮影監督として何本もの作品を作り、スタンリー・トン監督にくっついてハリウッドに渡って『ミスター・マグー』を撮った経歴の持ち主。アクションのテンポやキレはハリウッド流です。

 今回はほとんど東京でロケ撮影していて、台詞にも少しずつ日本語が混ざったりする。中村トオル、阿部寛、大和武、遠藤久美子、小沢真珠など、日本人のキャストも多数出演している。しかしこれは香港と日本の合作映画ではなく、純粋な香港映画。日本人のキャストは、すべて脇役や端役なのだ。こんなキャスティングができるのは、香港映画が元気だからに他ならない。日本人をキャスティングしたからといって、この映画の商圏を日本にまで広げようというマーケティング面での考慮はしていないように思える。もしそうした考慮があれば、日本人にもっと重要な役を回すでしょう。この映画の中では香港のスターがあくまでも主役で、日本は単なるロケ地、日本人のキャストはにぎやかしのゲスト扱いです。この映画の遠藤久美子なんて、『アルマゲドン』の松田聖子みたいなものだもんなぁ……。

 東京のロケーションを見事に使って、数々のアクションシーンを組み立てているのには感心する。香港のスタッフにこれができるんだから、日本映画だって同じことができるはず。でも日本では誰もやらない。このへんが、日本映画と香港映画の元気度の違いなんでしょう。なんだか悔しいけど、とっても楽しい映画でした。

(原題:東京攻略 TOKYO RAIDERS)

2001年3月公開予定 東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給


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