東京★ざんすっ

2000/12/21 東映第1試写室
つんくがプロデュースした短編映画7本立て。
オチのないショートコントは辛い。by K. Hattori


 モーニング娘。の生みの親でもある“つんく”がプロデュースする、「つんくタウンFILMS」の第5弾。過去4作は長編劇映画だったが(僕はどれも未見)、今回は1時間40分の中に全部で7つのエピソードが入ったオムニバス映画。監督も7人。1エピソードあたりの持ち時間は平均15分弱しかない。この短編オムニバスの元アイデアは、イギリス映画の『チューブ・テイルズ』だという。地下鉄をテーマにした本家に対抗して、『東京★ざんすっ』がテーマにしたのは“東京の乗り物”だ。ただしその中には、エスカレーターや遊園地の観覧車や銭湯の体重計も含まれている。確かにそれも“乗り物”だけど、トンチ合戦じゃあるまいし、ほとんどこじつけっぽいなぁ。ロケ地も東京のランドスケープを生かしているとは思えず、どのエピソードも個性的ではあるが、やりたい放題のバラバラな印象が残ってしまう。『チューブ・テイルズ』は監督もストーリーもバラエティに富んでいたけれど、地下鉄の話という縛りがあったし、映像のタッチを各エピソードごとに揃えて全体の統一感を作っていた。でも『東京★ざんすっ』にはそれがない。見事にてんでバラバラです。以下エピソードごとの感想。

 松尾貴史の「『優しさ』の国」は、バスの社内放送のうるささに腹を立てた中年乗客が反乱を起こす話。主人公の怒りが爆発した演説シーンに、あまり熱気のようなものが感じられないのが大きな欠点。ここで日常のタガが完全にはずれてしまわないと、その後のオチも生きない。出演者はかなり豪華だけど、それに目を奪われてしまい、肝心の話が弱くなってしまった。

 野沢直子の「東京エスカレーター」は、ビデオアートもどきの絵に最初はギョッとさせられるが、後半の演芸場の場面はかなり恐い。これは意外に面白かった。

 ケリー・チャン「約束」。全エピソード中、もっともショートドラマとしてまとまりのある作品。ただしこのオチはすぐに読めてしまう。観客がオチを読んだあとで、もうひとひねりしてほしかった。

 山崎伸の「東日暮里五丁目」は、銭湯の女湯にある体重計が主人公。彼の視点で物語が進行するので、男性客にとっては目の保養。でも銭湯で汗かいたぐらいで、2キロも体重を落とすのは土台無理だと思う。

 日比野克彦の「〜らしい姿」は、物語を作ることを最初から拒否し、なにやら不思議な世界を作っている。このぐらい開き直ってしまった方が、むしろ面白いかも。

 陣内孝則の「ランニング・フリー」は、小学校の校庭で行われるヤクザと警察の代理戦争。このアイデアを膨らませれば、長編映画も作れるかもしれない。そこそこ面白いのかもしれないけど、日比野作品のあとではギャップがありすぎ。ちっとも笑えなかった。

 飯田かずなの「マッハ★85」は、弁当屋の看板娘富子ちゃんに梅干しを届けるため奮闘する老人たちの物語。あまりにも異色すぎる。まったく笑えないぞ。この作品に限らず、どの作品もオチの切れ味がイマイチ。

2001年2月10日公開予定 新宿東映パラス2
配給:東映


ホームページ
ホームページへ