スーパーノヴァ

2000/12/18 UIP試写室
外宇宙航行船が救出した男が船内に持ち込んだものとは?
豪華なスタッフとキャストによる超B級映画。by K. Hattori


 時は22世紀。外宇宙を航行する医療宇宙船ナイチンゲール号は、ある惑星からの救難信号をキャッチ。現場に急行したナイチンゲールは、救命シャトルに乗ったひとりの若い男を回収する。だがその際、宇宙船は事故で大破。船長は死亡し、燃料も大半が失われてしまう。このままでは、青白く輝く巨大な太陽の引力に飲み込まれてしまう。はたしてナイチンゲール号は太陽の引力圏から無事に脱出できるのか。救出された男の正体は何者か。彼が船内に持ち込んだ謎の九次元物体とは?

 話の筋立ては超B級。それなのに出演者はA級という不思議な映画。ナイチンゲール号の乗員を演じているのは、ジェームズ・スペイダー、アンジェラ・バセット、ルー・ダイアモンド・フィリップス、ロビン・タニー、ロバート・フォスターなど。救出される謎の男を演じているのはピーター・ファシネリ。出演者はこれですべてだ。もともとの設定がかなり穴だらけで、「なぜ?」「どうして?」の連続。例えば最初のワープで船長が死んでしまう理由がよくわからない。一応これがラストのオチへの伏線になっているのだが、そのために人ひとり殺す必要はないのだ。これはおそらく映画の企画段階で、出演者はすべて無名の俳優を使い、船長役にだけは有名なスター俳優を使うつもりだったことの名残だろう。

 SF映画としては、謎の九次元物体が何なのか最後までさっぱりわからないというのはかなり無責任。要するにこれは、「正体不明だが宇宙全体を破滅させかねないぐらい危険な物体」というだけのこと。九次元物体などという目新しいものを出さずとも、核燃料電池だろうが外宇宙で捕獲された生物兵器だろうが、こんなものは何だって構わないのだ。映画の後半はこのエネルギー体によって肉体改造された男が船内を暴れ回るわけだが、不死身の肉体になったこの男が、なぜ九次元物体に固執するのかもよくわからなかった。体力も腕力もセックスアピールも十分で不老不死のこの男には、もはや九次元物体なんて必要ないんじゃないだろうか。彼はこれ以上に何を望んでいるのか? それが不明確なのは解せない。

 この映画はもともと低予算の作品として企画されていたものが、たび重なる路線変更や監督交代などで大予算化してしまったものだという。最初監督するはずだったジェフリー・ライトが解任され、その後はウォルター・ヒルが中心になって本編を撮影したところで投げ出し、ポストプロダクションと編集作業にはフランシス・コッポラまで加わっているらしい。出来上がってみれば、この映画は誰の作品でもないものになっていた。監督としてクレジットされている「トーマス・リー」という名前は、有名な匿名アラン・スミシーがあまりにも有名になったことから考案された新たな匿名監督の名だそうだ。

 日本では銀座シネパトスでとりあえず劇場公開というレベルだし、最初からB級のSF映画だと思って観れば、それなりに楽しめる作品だと思う。お話はB級だけど、美術やSFXにはお金がかかっていますしね。

(原題:SUPERNOVA)

2001年2月上旬公開予定 銀座シネパトス
配給:UIP


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