バトル・ロワイアル

2000/10/27 徳間ホール
高見広春の同名小説を深作欣二監督が映画化。
R-15指定はこの映画に気の毒。by K. Hattori


 修学旅行名目で絶海の無人島に送り込まれた中学生たちが、最後のひとりになるまで血みどろの殺し合いを続けるスーパー・バイオレンス・ムービー。監督の深作欣二にしてみれば、この映画を通して何かとニュースで話題になりがちな昨今の少年少女たちに、なにがしかのメッセージを伝えたいという思いがあったのだろう。ところが映倫はこの映画の暴力描写を問題にして、15歳以下鑑賞禁止のR-15に指定してしまった。中学生たちが主役の映画なのに、当の中学生たちが観られないというのは何だか理不尽な話で、監督としても映画会社としても不本意なことだったに違いない。主演は『仮面学園』の藤原竜也と、『トイレの花子さん』『学校の怪談3』の前田亜季。『その男、狂暴につき』で深作映画に出演しそびれたビートたけしが中学生たちを引率する教師・キタノ(笑)役で出演し、その北野武監督の『Kids Return』で主演デビューした安藤政信が狂暴な転校生役を 熱演している。このふたり、狂暴すぎる! 特に安藤君などは、今までついて回った色白の美少年という地位を藤原君に明け渡し、白目をむいて狂気に浸っている。

 見どころは登場した40数名の中学生たちがどのように殺し合い、殺され、あるいは自ら死を選ぶかというバリエーションの豊富さにある。制限時間は3日間。各自に手渡される武器は、ハリセンやヌンチャクから、ボウガン、サブマシンガンまで千差万別。それだけに、各人各様の死にっぷりが十分に楽しめるというわけだ。年端も行かない子供たちがバタバタ血塗れになって死んでいく様子を「楽しむ」などと書くのは不謹慎かもしれないが、深作監督の演出はやはり人間の生き死にの境界で力が入る。昨日まで友人や顔見知りだった者たちが、自ら生き延びるために他者を手にかけるという展開は、深作監督の代表作『仁義なき戦い』などにも共通するものだろう。果てしない殺戮と暴力の向こう側に、生きる実感のようなものが浮かび上がってくる。生きる目的、生命の意味、死してなお残る人間の絆などが、この映画の着地点であり、作品のテーマなのかもしれない。

 この映画の本来のターゲットである実際の中学生などが観客席から消滅してしまったことで、この映画は結果的として随分と中途半端なものになってしまったと思う。この映画はここ何年か中学生や高校生をキャーキャー騒がせている和製ホラー映画へのアンチテーゼでもあったはずだ。幽霊や怨念なんて恐くない。恐いのは人間であり、殺人衝動や暴力を生み出す心の闇は、誰しもが持っている。この闇こそが生命力の根源であり、闇と向き合うことのできない脆弱な人間は、生き残りを賭けた苛酷なゲームのなかではすぐ命を落としてしまう。

 40数名の人間が次々死んでいく話なので、エピソードが細切れになり、映画としてのまとまりは悪い。まとめ役はビートたけしなのだが、この幹事が悪の魅力をプンプン漂わせていたのは最初のオリエンテーションまで。最後のオチが長いのもちょっと間延びした印象。


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