セブンD

2000/10/10 東宝東和一番町試写室
人里離れた一軒家で作家夫婦が味わう恐怖の体験。
ホラー映画名作群の寄せ集め。by K. Hattori


 人里離れた一軒家に引っ越した夫婦が、家に取り憑いた何ものかに祟られて恐怖を味わうというホラー映画。主演は『フィッシャー・キング』『バタフライ・キス』のアマンダ・プラマーと、『イベント・ホライゾン』『タロス・ザ・マミー』のショーン・パトウィー。監督のセバスチャン・ニーマンはこれが長編映画デビュー作。ドイツ映画だが登場人物たちは全員が英語を話している。

 過去のさまざまなホラー映画から、設定や見どころを抜き出してつなぎ合わせたような作品。スランプに陥った作家が家族と共に人里離れた家に閉じこもり、少しずつ精神のバランスを崩していくという設定は『シャイニング』を思わせる。スイッチが入りっぱなしのテレビは『ポルターガイスト』。膨れ上がった死体は『セブン』。人間の姿に変身する不気味な軟体動物は『ファントム』にも出てきたし、その動物が生きた人間に取り憑くあたりは『X−ファイル』みたいだった。他にもこのジャンルの映画が好きな人には、いろいろな映画の断片が見えてくることだろう。映画としては特に目新しいところもないのだが、こうした映画の引用を観ているだけで、監督が僕と同世代であることがわかって楽しい。プレス資料のインタビュー記事によれば、この監督が映画作りを目指したきっかけは『スター・ウォーズ』を観たこと。最近感銘を受けた映画は『マトリックス』と『シックス・センス』。影響を受けた監督は、ヒッチコック、スピルバーグ、ルーカス、サム・ライミ、ロバート・ワイズ、ロメロ、カーペンター、ゼメギス、ジョン・ウーだそうです。これだけですごく親近感がわいてくる。

 26年前に奇妙な殺人事件が起こり、それ以来空き家になっている古びた家。それを知らずに引っ越してきた作家夫婦。夫は何かに取り憑かれたように執筆に熱中し、妻は何者かに死の宣告を受けて狼狽する。「あと7日でお前は死ぬ」「あと6日で死ぬ」「あと5日」「あと4日」と、作家の妻にさまざまな方法で警告を与える謎の声。この警告がどのような方法でメッセージを伝えてくるかが、この映画の工夫のしどころ。夫婦は事故で息子を失って以来、関係がぎくしゃくしている。この引っ越しにも、息子の死を乗り越えて心機一転出直そうという決意があったのだ。妻へのメッセージは、心理的な重圧から逃れようとする彼女が心の中で作り出した幻影なのか? 夫の態度が豹変したのは、執筆中の作家が陥りがちな神経の高ぶりによるものなのか?

 夫の態度はどんどんおかしくなり、妻の疑惑がどんどん深まっていくわけだが、それぞれの態度変化が一直線過ぎて面白くない。友人の編集者たちがやってくるあたりで夫の態度を元に戻し、妻の疑惑や疑念を一度振り払っておくと、その後の急展開が効果的だったと思う。それなりに面白い映画だが、観客の恐怖を引き出す駆け引きにつたない部分を感じてしまう。観客をさんざん恐がらせた後、少し油断させ、それから一気にショック描写で畳みかけていくような図々しさがほしい。

(原題:7 DAYS TO LIVE)


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