新・仁義なき戦い

2000/09/20 東映第1試写室
阪本順治監督による東映人気やくざ映画のリメイク。
中身は飯干晃一の原作と無関係。by K. Hattori


 『仁義なき戦い』は、飯干晃一の実録小説をもとにした東映の実録ヤクザ映画路線の金看板。深作欣二監督のメガホンで1973年に第1作目が公開されてから、同年に『広島死闘篇』『代理戦争』の3本が封切られ、翌年には『頂上作戦』『完結篇』が公開された。ここで最初の5部作は一応完結したが、同年『新・仁義なき戦い』が公開されてシリーズはリニューアル。『同・組長の首』『同・組長最後の日』が'75年に公開され、それから4年後に番外編的な『その後の仁義なき戦い』(監督は工藤栄一)が作られてシリーズは終了した。それから21年。20世紀最後の年に、どういうわけか東映は『仁義なき戦い』シリーズを再映画化した。

 原作者として飯干晃一の名がクレジットされているが、これは『極道の妻たち』シリーズに未だ家田荘子の名前がクレジットされるのと同じで、「タイトルだけ借りました」程度の意味。タイトルは『仁義なき』だが、映画業界はこうした点で「仁義」の筋目を通しておくわけだ。今回の映画は過去9作製作された『仁義なき戦い』とは、まったく無関係なオリジナル・ストーリー。監督が阪本順治で主演が豊川悦司なので、『傷だらけの天使』のような軽めの路線なのかと思ったら、さすがに今回はそこまで原作離れはせず、きちんと「巨大ヤクザ組織の跡目相続争い」という正統派ヤクザ映画になっていました。過去のシリーズに義理立てするように、有名なテーマ曲も編曲し直してそのまま使っている。今回の音楽担当は出演も兼ねた布袋寅泰。もちろんオリジナル曲もある。

 出演者の顔ぶれは東映ヤクザ映画というより、いつもの阪本映画の顔ぶれがそのまま集合したという感じ。普段は小さな予算の中でゴツゴツした男たちのドラマを作っている阪本監督が、今回は東映メジャー作品の予算を使ってかなり贅沢な映画作りにチャレンジしている。この映画には女性がほとんど登場しないのだが、登場する男たちの面構えがとてもいい。豊川悦司、布袋寅泰、岸辺一徳、小沢仁志、松重豊、哀川翔など、どれもいっぱしのヤクザ顔。いつもはVシネのヤクザ映画では大物を演じることの多い志賀勝が、この映画の中では小心な幹部ヤクザを演じているのも面白い。岸辺一徳演じる粟野親分のせこさもなかなか。佐藤浩市の役には、もう少し貫禄が欲しかったような気もするけど……。

 十分に面白い映画だったが、結局最後までピリッとしない映画だった。主人公たちを隔てた30年という空白の時間にあまり重みが感じられないため、彼らの再会があまりドラマチックに盛り上がらない。跡目相続争いというドラマも、途中から腰砕け気味になってしまう。産廃場のエピソードなど、説明がわかりにくい部分もある。村上淳演じるチンピラヤクザの話も、なんのためにあるんだかよくわからない。これだけの顔ぶれを揃えたのだから、もう少し脚本がすっきりと力強いものになっていれば、さらに面白い映画が作れたと思う。シリーズ化を考えているのかもしれないが、ちょっと難しいかも。


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