1st Cut
(初等科プログラム)

2000/09/19 映画美学校試写室
映画美学校初等科受講生が作った短編映画4本。
なんだかどれもイマイチだなぁ。by K. Hattori


 映画美学校の初等科受講生が作った4本の短編と、ドキュメンタリー・ワークショップ受講生が作った3本のドキュメンタリー作品からなる特集上映。今回は初等科プログラムの4作品を観た。梅内美江子監督脚本の『赤い芝生』。小泉恵美子監督脚本の『夕陽』。小出豊監督脚本の『綱渡り』。土屋詩野監督脚本の『APE(エイプ)』。面白い物もあれば、つまらない物もある。つまらない物は本当につまらないが、面白い物はそこそこレベルで止まっている。全体的にいまいちピンと来ない。

 映画学校の実習作品だから、映画の完成度についてあれこれ文句を言っても仕方がない。作っている側はプロじゃないのだ。しかし映画を観ていても、「なるほどこんなことがやりたいのね」と腑に落ちる作品がないのはどうしてだろう。技術的な拙さや未熟さという枠を越えて、「私はこんな映画が作りたい!」という意気込みが感じられるような作品が観たいんだけど、それは無い物ねだりなんだろうか。予算がない、時間がない、技術も能力も不足しているという中で作られた作品だとは思うけれど、例えばこれらの作品の中に「もうちょっとねばれたらいい映画になったかも」とか「もう少し予算があれば思い通りの絵作りができただろうに」などと思わせる物がないのはどうしてなのか。出来上がった映画はどれも、実習作品という枠内にきれいに収まってしまって、さまざまな制約の窮屈さをまったく感じさせない。それは計算づくでそうなっているのか? それとも作り手側の発想そのものが、実習作品という制約の枠に触れないほど小さな物でしかないのか?

 『赤い芝生』は38分の映画だが、非常にわかりにくい映画だった。録音が悪くて台詞が聞き取りにくい。加えて登場人物たちの関係も、最後までよくわからなかった。「あ、なるほど」と思ったときには、映画が終わっている感じだ。映画冒頭のナレーションが誰の台詞なんだかよくわからないし、物語の視点に一貫性がないから観ていると混乱してしまう。登場人物には生々しさがまったく感じられず、彼らが死のうが生きようが、その苦しさや痛みが僕に伝わってくることはなかった。

 『夕陽』は後味悪すぎ。小学生の女の子ふたりが、近所で遊んでいた小さな女の子をあちこち引っ張り回し、最後は迷子にして放置したまま帰宅してしまうという話だ。後味が悪い原因は、この映画のエンディングがなんとも中途半端だから。小学生の女の子がどんな気持ちで家路につくのか、その感情がまったく見えない。その点『綱渡り』は、子供の感情表現の部分で工夫が見られると思う。今回の4本の中では一番面白かったし、完成度の高い作品だと思う。少年の境遇を具体的に解説せず、引っ越しの荷物やこうもり傘などの小道具を使って観客にそれとなく想像させるところも上手い。

 『APE(エイプ)』はもっと面白い映画になると思うんだけど、演出の歯切れが悪すぎる。コメディにするのか不気味なファンタジーにするのか、はっきりしなきゃ。


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