バトルフィールド・アース

2000/08/31 徳間ホール
新興宗教の教祖が書いたSF小説をトラボルタが映画化。
もちろんトラボルタは熱心な信者です。by K. Hattori


 SF作家と言うよりむしろカルト宗教サイエントロジー教会の創始者として有名なL・ロン・ハバードの原作小説を、熱心なサイエントロジー信者として教団のイメージアップに一役買っているジョン・トラボルタが映画化した作品。ハバードの原作はかつてサンリオSF文庫から邦訳が出ていたのだが、文庫そのものが消滅してからはほとんど入手困難な状態になっている。今後発売されるとしたら、現在ハバードの本を一手に扱っているニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパンあたりから再版されるのが有力候補か。ここからはハバードが書いた自己啓発本のベストセラー「ダイアネティックス」などの他に、小説も数冊出版されているようだ。サイエントロジーの入門書も出している、明らかにそれ系の出版社のようですけどね。トラボルタは主演作『フェノミナン』がドイツで上映禁止になったことがあり、その理由は「サイエントロジーの布教映画だ」ということだった。たぶん今回の映画も、ドイツじゃ禁止でしょう。ちなみにこの映画のプレス資料には、「サイエントロジー」の名前も「ダイアネティックス」の名前も出てきません。まぁ当然の話ではありますけど……。

 こういういわく付きの映画を買い付けてくるのはそれなりに勇気が必要だと思う。教祖様が原作を書き、信者たちが製作したという意味で、この映画は幸福の科学の『ノストラダムス戦慄の啓示』や『ヘルメス/愛は風の如く』と何ら変わらないのだから。(現在『太陽の法/エルカンターレへの道』も待機中だ。)もちろん映画として面白いのなら、原作者が誰であろうと、製作者がどんな意図でそれを作ろうと構わない。『バトルフィールド・アース』だって壮大なスケールのSF大作映画になる可能性はある。「原作・製作・主演がサイエントロジーがらみだから」という理由で、買い付けを躊躇するのは馬鹿馬鹿しい。でもこの映画、まったく面白くないのです。どのくらい面白くないかというと、この映画に比べれば、あの『タイタンA.E.』が血沸き肉踊る痛快娯楽作に思えるほどだ。原作が単行本で4冊、文庫本で6冊という大長編だからかもしれないが、このチマチマダラダラした構成は何とかならないのか。主人公が宇宙人に捕まって、そこから逃げてはまた捕まり、捕まってはまた逃げての繰り返し。馬鹿馬鹿しくて見ていられない。

 こんな映画でも徹底的なバカ映画になっているならまだ許せるのですが、この映画は馬鹿馬鹿しいだけでバカではない。バカにして笑い飛ばせるほどの勢いすらないのです。宇宙人の牢から脱走するのに、なんで高等数学や航空力学が必要なんだ。石器時代の生活をしている原始人たちが、1週間でジェット戦闘機の操縦法を覚えられるはずないだろうに。この無茶苦茶さを、脚本段階で解決しようとする気配がまるでない不思議さ。バリー・ペッパーが知識だけで皆のリーダーになれるなら、非常事態に備えてあと2,3人の原始人を学習マシンに座らせておいた方がいいと思うけどね。ああ、疲れた。

(原題:BATTLEFIELD EARTH / A SAGA OF THE YEAR 3000)


ホームページ
ホームページへ