劇場版
きかんしゃトーマス
魔法の線路

2000/08/29 メディアボックス試写室
子供に人気の「きかんしゃトーマス」が豪華キャストで劇場映画に。
この世界に人間が登場するのは無理がある。by K. Hattori


 日本でもテレビ放送され、子供たちに大人気の「きかんしゃトーマス」が劇場映画になった。出演者の中にピーイター・フォンダやアレック・ボールドウィン、マーラ・ウィルソンなどの名前があり、トーマスの世界にどうやって生身の彼らが登場するのか疑問だったのですが、映画を観ると「なるほど」と思う作りになっている。映画の中はトーマスたちのいるソドー島と人間たちの暮らすシャイニングタイムとが、ある種のパラレルワールドのようになっている。両方の世界を行き来できるのは、ソドー島で鉄道の仕事をしているミスター・コンダクターといとこのジュニアだけ。ところがシャイニングタイムの近くに住むバーネット・ストーンという老人は、子供の頃に一度ソドー島に行ったことがあり、山の中の洞窟のような場所にはソドー島からやってきた小さな機関車“レディー”を隠している。それを知った孫娘のリリーは、ジュニアと一緒にソドー島に出かける。

 シャイニングタイムという町が我々の暮らしている世界と同一平面上にあるのではなく、この町自体がやはり我々の世界とは少し違うパラレルワールドになっているのがミソ。ヨーロッパの町のようでありながら、そこにはインディアンが運転する蒸気機関車が走り、駅には小さな小さなミスター・コンダクターがいても誰も不思議に思わない。みんなが原色の服を着て楽しそうに歌いながら暮らしているのが、シャイニングタイムです。ゴマ横町(セサミストリート)が実際にはこの世界のどこにもないように、シャイニングタイムも世界のどこにもない、我々の知らないもうひとつの世界にある夢の町です。

 CGやデジタル処理が当たり前になっている時代なのに、映画版のトーマスに出てくるソドー島はテレビ版と同じミニチュアの世界。トーマスなど機関車の顔をCGで動かしたりしたら嫌だなと思っていたら、さすがにそんな馬鹿なことはしなかった。ソドー島でのエピソードは基本的にテレビ版の延長にあり、しかもスケールアップしてある。クライマックスの橋崩落シーンなど、テレビ版ではこれほどの迫力に描けないと思う。ここは満足。

 映画の中ではタイトルにもなっている「魔法の線路」でソドー島とシャイニングタイムが結ばれるのですが、ふたつの世界の馴染みがいまひとつしっくりしない。シャイニングタイムにカメラが切り替わると、どうしても違和感を持ってしまう。レディーがソドー島に行く場面はいいのですが、トーマスがシャイニングタイムに現れるのはどうしても違和感がある。バーネットとリリーがソドー島に行っても、やはり違和感がある。どう考えても、「豪華キャストの映画にするために、無理矢理シャイニングタイムという町を作りました」という強引さが見えてしまうのです。テレビ版のままのキャラクターで、そのまま映画用に物語をスケールアップすればよかったのに、余計な付録で全体を水増ししたような感じです。ピーター・フォンダとアレック・ボールドウィンもミスキャスト。ふたりとも顔つきが凶暴すぎます。

(原題:THOMAS AND THE MAGIC RAILRORD)


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