硝子のジェネレーション
香港少年激闘団

2000/08/11 GAGA試写室
『欲望の街/古惑仔』シリーズの少年時代篇。
香港若手人気スターが勢揃い。by K. Hattori


 香港映画界の若手スターが総出演した、『欲望の街/古惑仔』シリーズの番外編。出演しているのは『美少年の恋』や『ジェネックス・コップ』などに出演していた、ニコラス・ツェー、サム・リー、ダニエル・ウーなどの今の香港でもっとも若くて人気のある美少年(?)スターばかり。製作されたのは1998年。スー・チーがゲスト出演しているのも見どころだ。しかしこの映画、なんだか観ていてすごく違和感がある。話の内容は確かに『欲望の街/古惑仔』シリーズと共通だし、主人公たちが黒社会に入る経緯を描いた映画だという狙いもわかる。ところが出演しているのがみんな若い人気者ばかりで、観ていると『ジェネックス・コップ』の出演者が『欲望の街/古惑仔』ごっこをしているように見えてしまう。かろうじてBさん役のン・チーホンや、カン役のフランシス・ンがシリーズの面影を伝えている。

 2時間近い映画で、お話の方も内容盛りだくさん。しかしこの盛りだくさんな内容をうまく整理できておらず、ひとつひとつのエピソードが映画の中でバラバラになってしまっていると思う。しかもエピソードによっては、未消化で放り出されているものもある。例えば主人公ナンと元クラスメートの少女のエピソードは尻切れトンボ。スー・チー演じるヒロインとナンの間に何があったのかも不明確。ナンの母親がなぜ亡くなったのかもよくわからなかったし、中国の天安門事件とからめる理由もよくわからない。物語の中に時々警句めいたタイトルが出てきたり、歌詞がテロップで流れるのも統一感を失わせているように思う。これはひょっとしたら、もっと長い尺があったものを、劇場公開時に2時間の長さまで縮めたのではないだろうか。これだけの内容を映画にするなら、エピソードを整理してもっとコンパクトにするか、あるいは全部の素材を生かすため、全体の尺をもう少し伸ばして各エピソードに過不足のない描写をするしかない。

 今回の映画は日本でもいろいろとニュースで話題になる「17歳」という年齢に引っかけ、社会の中で不適応や問題行動を起こす少年たちの物語ということにして公開したいらしい。確かにこの映画の中には、今の17歳の少年たちにも共感できる不満や悩みが描かれているに違いない。しかしこの映画の舞台は、北京で天安門事件が起きた1989年なのだ。主人公の少年たちは不良のレッテルを貼られて学校から追い出される。この映画に登場する暴力描写は凄まじいが、それもごく普通の優等生タイプが、突然教師やクラスメートをナイフで刺すという事件と同類とは思えない。むしろ古典的な不良少年の問題行動だ。昨今の「突然キレる普通の子供たち」に比べると、この映画に出てくる不良少年たちは相当にわかりやすい。規格からはずれた若者が不良と呼ばれ、素行が改まらない不良少年がやくざになるというパターンは、昔の日本にもあったんだろうけど……。

 出演者が豪華すぎて、本来なら脇筋のエピソードがふくらみすぎ。まとまりに欠けるのはそのせいでしょう。

(原題:新古惑仔之少年激闘篇)


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