X-メン

2000/08/08 FOX試写室
ブライアン・シンガー監督が人気アメコミシリーズを映画化。
石ノ森章太郎的な世界でなんだか懐かしい。by K. Hattori


 人気アメコミシリーズを『ユージュアル・サスペクツ』『ゴールデン・ボーイ』のブライアン・シンガー監督が映画化した、荒唐無稽なスーパーヒーロー・アクション映画。製作総指揮に『スーパーマン』シリーズのリチャード・ドナーが名を連ねているあたりが笑える。これは筋金入りの映画です。僕は原作にはまったく関心がなく、マーベルコミック版も知らなければ、アニメもゲームも知らないし、フィギュアも持っていない。それでもこの映画を観始めた途端、胸の奥から広がる暖かくて甘酸っぱい思い。これは郷愁です。

 この映画は僕にとって、いや僕の世代の男性映画ファンにとって、ものすごく身近なものなのだと思う。超能力を持ったヒーロー軍団が、同じく超能力を持った悪の軍団と戦う。悪の軍団は超能力と技術力を使って、人間世界をその支配下に置こうと考えている。主人公のウルヴァリンは人間離れした治癒能力を持つミュータントだが、その身体には何者かが改造手術を施し、両手からは特殊金属性の爪が飛び出す。乗り物はオートバイ。他のメンバーたちも、それぞれに特殊な超能力を持っていて、最後はみんながそろいのコスチュームを着て敵と戦う。これって設定が「サイボーグ009」とか「仮面ライダー」とか「ゴレンジャー」など、石ノ森章太郎原作のヒーローものと同じです。面白い。そして懐かしい。

 原作は膨大なキャラクターとエピソードが錯綜する巨大な物語世界になっているようですが、映画では登場人物の関係をシンプルにまとめ、なおかつ将来的に続編やテレビシリーズが作れるような含みを持たせています。物語の舞台は近未来。世界各国で突然発生し始めたミュータントに、人間たちは恐怖を感じ始める。ミュータントの特殊な能力は、旧来からの人類にとって大きな脅威になり得る。社会ではミュータントたちに対する差別や迫害が起き始めている。そんな中で、ミュータントたちは2つの考えに大きく引き裂かれて行く。ひとつは自分たちを「人類の進化形」「人類遺産の継承者」と位置づけ、積極的に人類と戦って世界を支配しようとするグループ。もうひとつは自分たちを「人類のパートナー」「人間たちの守護者」と考え、人類との共存を考えるグループ。ふたつは水面下で対立し、抗争の火花を散らす。

 シンガー監督の前作『ゴールデン・ボーイ』で元ナチス高官を演じたイアン・マッケランが、今度はナチスに迫害されたユダヤ人に変わっているのが面白い。それでもやっぱり、成長すると人類の敵になるところがさらに面白い。マッケラン演じるマグニートという悪役は、何か行動を起こすときに、わざわざ総大将自らが陣頭指揮を執る。いちいちそんなコトしていたら、いつまでたっても世界征服などできないと思うんだけど、このあたりの感覚がいかにも「仮面ライダー」ぽくて最高!

 映画に登場するミュータント差別は、まず間違いなくエイズや同性愛者に対する差別のメタファーでしょう。結構深いです。続編がすぐにでも観たい!

(原題:X-MEN)


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