スノー・ステーション

2000/07/14 TCC試写室
雪に閉ざされた街道沿いのモーテルに銀行強盗が逃げ込む。
ミステリーとしてもアクションとしても工夫の余地あり。by K. Hattori


 雪に閉ざされたロッキー山中のモーテル。吹雪で高速道路が封鎖され、数組の宿泊客たちはモーテルで足止めを食うことになる。道路封鎖を告げにきた若い警官ジェイソンも、吹雪が収まり除雪車が出動する翌朝までは同じくモーテルで足止めだ。ところがそのモーテルのある部屋で、人が争った跡と大量の血痕が発見される。誰かがそこで殺されたらしい。モーテルの主人の話によれば、今朝チェックインした新婚夫婦の姿が見えないという。部屋はもぬけの殻。やがてふたりの死体が相次いで発見され、現金数十万ドルを詰めた袋も見つかる。これは前日起きた4人組の銀行強盗事件と関係がありそうだ。おそらく強盗団内部で仲間割れが起き、新婚夫婦と偽って宿泊していたふたりが殺されたのだろう。残るふたりの強盗は足止めを食ったまま、モーテルに残っている。雪に閉ざされたモーテルで、犯人探しが始まるのだが……。

 周囲から隔離されたモーテルで起きた殺人事件。外は猛吹雪で犯人は逃げることができない。犯人と疑わしき人物は何人もいる。これは犯人探しのミステリーとしては、きわめて古典的な設定だと思う。しかしこの映画は、ミステリーとしては少し弱い。消去法で次々に容疑者を取り除いていくと、映画の終盤に差し掛かった時点で犯人が割れてしまうのだが、そのプロセスにヒネリがない。こうした設定の場合、主人公も含むすべての登場人物を容疑者にするのが定石だが、この映画ではその嫌疑のかけ方が十分ではないし、嫌疑をかけようと思えばかけられる人物も、最初から容疑者から除外してしまうような甘さがある。例えば主人公の若い警官は最初から容疑者リストに名前がないし、モーテル経営者夫婦も除外されている。このあたりは、ほんのわずかな台詞、ほんの些細な行動のちぐはぐさなどを見せることで、全員を容疑者にしてしまうことだって可能なのだ。

 映画の序盤で怪しい人物は何人かいるが、それがごく早い段階で容疑者リストから消えていくのも残念。これも物語の組立や設定を少し工夫するだけで、容疑者リストをほぼ完全なまま映画の終盤まで維持することができたはず。それをしないまま、安直に物語を進めるのは、この映画の大きな欠点のように思える。

 ミステリーとして弱さを、アクションやスペクタクルで補うという方法論も考えられるが、この映画はそうした作品でもない。宿泊客が全員モーテルに足止めされる猛吹雪という描写にも迫力がないし、映画の最後にある雪上車とスノーモービルのカーチェイスや犯人との格闘シーンにも、手に汗握るアクションは期待できない。結局この映画、全体にこじんまりとまとまっているのが欠点なのでしょう。ミステリーとして創意工夫をこらせばそれで面白くなるでしょうし、終盤のアクションシーンに力を入れればそれも面白かったと思う。また主人公がらみで、ラブストーリー風に見せていく方法もある。そうした「ここが見どころだ!」という部分が見えてこない映画は、やっぱり観た後の印象も薄くなる。

(原題:THE LAST STOP)


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