TAXi 2

2000/07/10 日本ヘラルド映画試写室
リュック・ベッソン製作のカースタント映画第2弾。
前作よりずっと面白くなっている。by K. Hattori


 リュック・ベッソンが製作したカーアクションだけのバカ映画『TAXi』の続編。僕は前作のアクションにかなり不満があったのだが、今回は全編手に汗握るものに仕上がっていて、まずまず満足。話は相変わらずバカだし、登場するアクションシーンにも特に目新しいものはないのだが、次々と派手なカークラッシュやカーチェイスが登場して観るものを飽きさせない。

 前作では悪役の銀行強盗チームが妙にシリアスだったので、それを追う警察側がひたすら間抜けに見えてしまったのだが、今回は日本の大臣を誘拐する犯人グループもかなり素っ頓狂な設定なので、うまくバランスが取れていると思う。それにして、前作では「ドイツ人犯人グループがドイツ車で逃走」し、今回は「日本人犯人グループが日本車で逃走」するというわかりやすさ。この映画はこれからもシリーズ化していくそうですが、次回作以降は「アメリカ人犯人グループがアメ車で逃走」とか「イタリア人犯人グループがイタ車で逃走」など、それぞれのお国柄に合わせた車種選びが踏襲されていくものと思われます。前作では「犯人はドイツ車を使っているからドイツ人だ」という強引な展開に唖然としましたが、今回は「犯行に使われたのが日本車だから犯人は日本人だ」という展開にも「またか」と思うだけ。この映画は外国人に対するステレオタイプな偏見がそのまま出てくるのが面白い。前作では「ドイツ人は時間に正確で几帳面」という描写がありましたが、今回は「コンニシューワ」「ニンジャ!」「カラテ」という、日本人が観たら「それはないだろう」と思わせるような描写が登場。かなり脱力してしまいますが、それでも笑えます。

 前作ではまだストーリーで観客を引っ張ろうとする部分が多かったのですが、今回はストーリーを半ば放棄して、キャラクターの魅力だけで映画を進行させている。観ていても犯人グループの目的がなんなのか、主人公や警察が何を狙って行動しているのかよくわからないのですが、とりあえずその場その場で面白ければそれでいいというルーズな感覚で最後まで突っ走ってしまう。上映時間が1時間半ほどなので、このルーズな筋運びでも何とかラストまでたどり着けるのです。この映画をシリーズ化するには、こうしてキャラクター中心の展開にするしかないのでしょうね。物語を細かく考えはじめると、「なぜそこで車を使わなければならないの?」とか「ヘリ使えよ!」とか「なんで山カンのような推理がいつも当たるんだ?」とか、疑問が山のように出てきてしまう。この映画はストーリーの枠組みがユルユルだから、時速300キロというバカみたいなカーアクションが可能になる。これはこれで、ひとつの作戦でしょう。

 ただ、バカをやるならもっとバカに徹してもいいのに、と思うところも多い。ルーズな物語の枠組みをぶち壊すぐらいの勢いが物語に欲しかった。たしかにスタントシーンはすごいのですが、それだけだとちょっとね。でも前作よりよくなったことだし、これは次回作に期待。

(原題:TAXi 2)


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