ドグマ

2000/05/25 GAGA試写室
キリスト教の世界観をパロディにしたコメディ映画。
この映画で笑える日本人がどれぐらいいる? by K. Hattori


 『クラークス』『チェイシング・エイミー』のケヴィン・スミス監督最新作。『グッド・ウィル・ハンティング』のマット・デイモン&ベン・アフレックの再共演ということもあり、全国の松竹東急系で公開されることになるらしい。たぶん興行的にはまったくダメでしょう。こんな映画、日本でヒットするわけないじゃないか!

 欧米のパーティーでは一般的に、「病気・政治・宗教の話題はタブー」なのだそうです。この映画は普段大っぴらに語れない宗教にまつわる話を、徹底的に茶化し、パロディにし、おちょくりまくったコメディ映画。アメリカではカトリック教会がこの映画の上映禁止運動を起こしたとか起こさなかったとか……。まぁ観れば一目瞭然。これは上映禁止運動を起こされても仕方ないような映画です。天使、悪魔、堕天使、神、使徒、預言者、教会、奇跡など、キリスト教にまつわるキーワードが無数に散りばめられている映画なので、この映画のどこがどう面白いのかを理解するには、キリスト教に対する理解や知識がある程度以上は必要になると思う。僕はキリスト教オタクなのでパロディやギャグそのものは理解できるのですが、それを頭で理解しているだけなので「なるほど」とは思ってもあまり笑うことはできなかった。

 千年前に天国を追われた天使ふたりが、何とかして再び天国に戻ろうとする。同じ頃、カトリック教会は新たな信者獲得のためのキャンペーンを行い、定められた日にニュージャージーにある教会のアーチをくぐった者は、それまでの罪をすべて許されて天国に行けるという大胆なイベントを行う。もちろんこれはローマ法王のお墨付き。このニュースを知ったふたりの天使は、このイベントに乗じて再び天国に戻ることを画策。ウィスコンシンからはるばるニュージャージーを目指す。だがそれが実現すれば神の定めたこの世の秩序は崩れ、世界は消滅してしまうだろう。堕天使たちの行動を阻止するため、大天使メタトロンはイリノイ州の産婦人科院に勤務するベサニーに白羽の矢を立てる。やがて彼女のもとにはふたりの預言者とキリスト13番目の使徒が現れ、共にニュージャージー目指して旅をすることになる。

 聖書やキリスト教のパロディなので、引用もとがわかれば笑える場所もある。例えばメタトロンが出現するときに炎の中から声が聞こえたり、教会に乗り込んだルーファスが「“私はある”という方の命令だ」と言うのは出エジプト記からの引用。キリストがじつは女性でしかも黒人だという話も、最近のフェミニズム神学や一部の黒人教会の様子を知っていると笑える。逆にそうした事柄をまったく知らないと、この映画は天使や悪魔が入り乱れての悪ふざけにしか見えないと思う。アメリカ人のどの程度が真剣にキリスト教を信仰しているのかは知りませんが、少なくとも聖書のエピソードや基本的な教義については親しんでいますから、こうした映画が成立する土台はあるのでしょう。でも日本のキリスト教人口は1%未満だよ。この映画、日本で誰が観るの?

(原題:DOGMA)


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