クロスファイア

2000/05/22 東宝第1試写室
念力発火能力を持つヒロインが犯罪少年たちに死の制裁。
宮部みゆきの原作を金子修介が映画化。by K. Hattori


 宮部みゆきの原作を、平成『ガメラ』シリーズの金子修介が映画化したサイキック・エンターテインメント。念力によって火をおこす能力(念力発火能力=パイロキネシス)を持ったヒロインが、殺人をゲーム化する少年犯罪グループと、それを影で操る黒幕たちに立ち向かう。主人公・青木淳子を演じるのは矢田亜希子。幼い頃から自らの力を封印し、爆発しそうになる自らの感情を抑圧しながら目立たないOL生活を送っている淳子は、同じ会社の多田一樹に淡い恋心を抱いている。だが彼の妹が連続女性殺害犯に殺され、その容疑者として少年グループの名が取りざたされるが、警察は証拠不十分で彼らを逮捕することができない。淳子は封印していた自らの能力を使って犯行グループに復讐しようとするのだが……。

 『ガメラ』でめくるめく火炎ショーを観客に見せつけた金子監督は、この映画でも主人公が発する怒りの火炎をたっぷりと見せてくれる。似た趣向の映画としてはドリュー・バリモア主演の『炎の少女チャーリー』があったが、炎の描写に関しては雲泥の差があります。主人公の怒りに火がつき、極悪少年グループが次々と火だるまになっていく場面を観ると「いけ〜、やれ〜、殺せ〜」とこちらまで熱くなってくる。炎が生き物のように動き回るビジュアル・エフェクトだけでも、この映画は一見の価値があると言えるかもしれない。女性を美しく撮ることにかけては定評のある金子監督だけに、ヒロインの矢田亜希子や、その妹分とも言うべき長澤まさみもチャーミングに描けている。金子監督は新人の若い女優から魅力を引き出すのが本当に上手い。今回は本田博太郎、永島敏行、螢雪次朗、中山忍、藤谷文子といった、『ガメラ』組の俳優たちが顔を出しているのも嬉しい。

 見せ場は多くて退屈しない映画だし、それなりに興奮させられる場面もあるのだが、脚本や人物配置に気になる点も多い。例えば、少年グループ襲撃の犯人としてヒロインは警察に追われることになるのだが、パイロキネシスでの殺人を警察は立証することができないから、主人公は「不能犯」として逮捕されないか、逮捕されたとしても起訴されないのではないだろうか? 念力で人を焼き殺すのは、丑の刻詣りで人を呪い殺すのとあまり変わらない。例えそれで本当に人が死んだとしても、行為と死との間に合理的な説明を付けることができなければ、その殺人を罪として裁くことができないはずです。警察に逮捕されることなく思いのままに殺人(復讐)行為を繰り返すヒロインが、やはり警察に逮捕されることなく思いのままに殺人を繰り返す敵と戦うことになるところに、このドラマの対立軸があるのではなかろうか。警察はこの件に対してはまったくの無力。桃井かおりと原田龍二は、単なる狂言回しだと思うけどな。

 ヒロインを巡るふたりの男性のポジションが不明確なのも残念。ここが明確になると、切ないラブ・ストーリーとしての要素が強まって、最後は感動で大泣きできたと思うんだけどね。オチもよくわからんぞ。


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