エドtv

2000/05/18 UIP試写室
CATVに私生活を24時間中継されることになった青年。
ロン・ハワード監督が職人ぶりを発揮。by K. Hattori


 『アポロ13』『身代金』のロン・ハワード監督最新作は、テレビ時代の有名人をテーマとしたコメディ映画。ひとりの人間の生活をケーブルテレビが24時間放送するというアイデアは『トゥルーマン・ショー』と同じですが、トゥルーマンが生まれてからずっと無数のカメラで隠し撮りされ、周囲の世界も人々もすべて作り物の虚像だったのに対し、『エドtv』の世界はすべてがヤラセなしの本物。番組視聴者の中から選ばれたエドというレンタルビデオ屋の店員が、それまでと変わらぬ日常をカメラの前にさらしているうちに、全米の人気者になっていくというお話です。何の才能も取り柄もない人間の生活が、はたしてテレビのエンターテインメントになり得るのかどうかは疑問ですが、この映画ではそのあたりをうまく誤魔化して「こんなことがあり得るかも」と思わせる。現実の日常生活はもっと退屈なもので、とても高視聴率を取れるようなお話にはなりっこないとおもいますけどね。まぁそこは映画だから……。

 視聴率競争の中で苦境に立たされているドキュメンタリー専門CATV局“トゥルーtv”は、起死回生の企画として視聴者参加型の24時間中継番組を製作する。一般人のごく普通の日常生活を複数カメラで生中継するという、カメラマンと中継車以外には何もいらない安上がりな企画。だが「何かがハプニングが起きるかも」という視聴者の期待感が高まって番組は大ヒット。やがてカメラは、エドや家族の葛藤や隠しておきたい出来事までを全米に中継し始める。エドや家族や恋人たちは、一躍全米の有名人になる反面、ささやかながら保たれていた家族の絆はバラバラになってしまう……。

 ロン・ハワード監督の映画はいつもそこそこ面白いのに、後半で失速するか腰砕けになるのが常だった。これは脚本のせいでもあるのだろうけれど、本人の演出力の問題でもあったと思う。今回の『エドtv』は、その点でわりと最後までダレることなく観られる映画だと思う。もちろん弱いところもたくさんあるけれど、終盤を短く切りつめて間延びした印象を与えない。この監督がいつも失敗するのは、クライマックス以降がダラダラと長い部分だった。たいていの映画は最後にアクションで締めるんだけど、この監督はアクション演出が苦手なのです。今回の映画では、主人公がテレビ局側のアンフェアな態度に怒り、何が何でも番組を終わらせると決心してからエンドマークまでがじつに素早い。これは長々と観せてもダメな部分なので、これは上手い演出だと思う。

 キャスティングが絶妙。主人公エドを演じているマシュー・マコノヒーも嫌味のない間抜けぶりを発揮しているし、兄貴役のウッディ・ハレルソンも最高。この兄弟の母親がサリー・カークランドで、義父がマーチン・ランドーというのもとんでもないが、実父がなんとデニス・ホッパーというのには笑ってしまった。すげ〜濃い顔ぶれだなぁ。この顔ぶれを見ただけで、何か事件が起きずにいられない雰囲気がプンプン匂ってくるぞ。

(原題:ED TV)


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