シーズ・オール・ザット

2000/05/15 松竹試写室
僕が今年前半で一番気に入っているのはこの映画だ!
現代版の『イースター・パレード』です。by K. Hattori


 少し前にも1度観た映画だけど、僕はどうもこの映画が気になる。気になると言うより、大いに気に入っていると言った方がいいかもしれない。中身はコテコテの学園ラブコメディ。学校の中で一番ダサくて地味な女の子が、どういうわけか学校で一番イケてる男の子と恋に落ちるという、2,30年前の少女漫画も真っ青の内容。少女漫画といえば、最初はメガネをかけていた女の子が、メガネを外すとすごくチャーミングに大変身という展開もすごい。はっきり言ってバカです。でもじつは僕、この手の展開が大好きなのです。やはり大好きな映画である『乱気流/グランドコントロール』にも、新人管制官のクリスティ・スワンソンがメガネを取ったら美人だったという場面が出てきて大喜びしてましたし……。

 主人公の男の子が「学校で一番ダサい女の子を、僕が6週間でプロムクイーンにしてみせる」と豪語し、それを友人と賭の対象にするという展開は『マイ・フェア・レディ』と同じです。しかし人物配置や物語の構成は、むしろ往年のMGMミュージカル『イースター・パレード』とうりふたつ。フレッド・アステア演じるスター・ダンサーと、生徒会長で全校の女子生徒からモテモテのフレディ・プリンツJr.は同じ役回り。『イースター・パレード』でも『シーズ・オール・ザット』でも、主人公を振るタカビー女は別の男になびくが結局はその男にも振られる。演じているアン・ミラーもジョディ・リン・オキーフも、共にグラマーな色気ムンムンタイプです。対して主人公に拾われて美しく変身して行くのは、ジュディ・ガーランドとレイチェル・リー・クックという色気より元気が取り柄のタイプ。いつしか相手に恋心を抱いたヒロインが、彼が昔の恋人と踊るのを見てその場から逃げ出してしまうところまで同じです。『イースター・パレード』におけるピーター・ローフォードの役回りは、少し意地悪にアレンジされてポール・ウォーカーが演じる悪友になっています。

 この映画のロバート・イスコーヴ監督は、元ダンサーで振付師だったというキャリアの持ち主。この監督が『イースター・パレード』を意識していないはずがない。この映画はミュージカルではありませんが、ミュージカル映画のテイストがたっぷりつまった娯楽映画になっている。それが一気に爆発するのは、やはり最後のダンスシーンでしょう。20人のプロダンサーが踊る踊る!

 話は単なるラブコメなんだけど、その中には高校卒業後の進路に悩み、家族との関係に頭を悩ませる青春の葛藤がきちんと描かれている。こうした青春のディテールを丁寧に描写することで、この映画は『イースター・パレード』の現代版焼き直しではなく、オリジナリティのある今の映画になっているのです。主演のフレディ・プリンツJr.は『ウィング・コマンダー』より断然こちらの方がいい。今後に注目すべき若手俳優です。ヒロイン役のレイチェル・リー・クックは、たぶんこの映画1本で終わってしまう女優だと思うけど……。

(原題:She's All That)


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