女性上位時代

2000/04/24 シネカノン試写室
カトリーヌ・スパーク主演のセックス・コメディ。1968年製作。
とにかくオシャレでエッチ。デートに最適かも。by K. Hattori


 1968年にイタリアで製作されたセックス・コメディ。主演はカトリーヌ・スパーク。彼女の主演映画は数年前に『太陽の下の18才』と『狂ったバカンス』がリバイバル公開されているそうなのだが、残念ながら僕はどちらも未見。残念なことをした。主演のスパークはこの年23歳なのだが、結婚3年目にして夫を失った未亡人という役柄。管財人の弁護士から秘密の部屋の鍵を渡された主人公ミミは、そこが夫の秘密の情事の場所だと知って悔し涙にくれる。夫が死んだことそのものは少しも悲しくないし、むしろ退屈なほどなのに、夫が自分に隠れて女たちと過激なセックスをしていたことは許せない。しかも夫は変態だったのだ。部屋は全面が鏡張り。残された8ミリフィルムには、夫がよりにもよって自分の親友とセックスしているところが大写し。しかも3Pや4Pはもちろんのこと、SMあり、レイプあり、コスプレありと、倒錯セックスのオンパレード。「私にはちっともそんな楽しそうなことをしてくれなかったじゃないの!」というわけで、彼女は死んだ夫が追求した性の快楽を自らも追い求めようと、手当たり次第に男をくわえ込んではセックスする性の狩人になったのだった……。

 昔の映画なのでセックス・シーンそのものに過激さはありませんが、おっぱいポロリぐらいは何度も登場します。映画の序盤から中盤までは、カトリーヌ・スパークの顔とバストを別々のカットで撮影していたため「こりゃ胸は吹替だろう」と思っていたら、終盤になってトップレスの場面が多くなって本人のものだとわかりました。だから何だというわけでもないんですが、最初に「どうせニセモノだ」と決めつけていたものだから、本物と知ると何となく嬉しい。たったこれっぽっちのことで男心をくすぐる、男性心理を知りつくした演出です。

 意気込んでセックス探求の大海原に乗り出したヒロインは、いつまでたっても幸福になれない。セックスの欲望はどんどん大きくなって、イマジネーションや技術に長けるようになっても、心はいつも別の何かを求めている。偶然病院のレントゲン医師と知り合ったミミは、堅物そうな彼を誘惑することを決意。彼の勤める大学にニセ学生として潜り込み、ついに旅行に誘わせることに成功。真面目人間の彼をなんとか誘惑して一夜を共にすることに成功すると、今度は彼が「結婚しよう」なんて言い出して大慌て。この真面目な医師をジャン=ルイ・トランティニャンが演じているのですが、彼女の告白を聞いた彼が意外な行動に出るあたりがこの映画最大のクライマックスでしょうか。やるなぁ……。

 タイトルが『女性上位時代』だし、セックスに対して積極的なヒロインの物語だから、今なら同じ話でも「既存の価値観から解放される女性の物語」として作るんでしょうね。でもこの映画はもっと単純。最後に女の幸せの鍵を握るのは、結局は男なのです。男の優しさと包容力、そして少しばかりの強引さが、ヒロインを性の泥沼から救い出す。結構男性に都合のいいお話なんです。

(原題:LA MATRIARCA)


ホームページ
ホームページへ