ジュブナイル

2000/04/18 シネマメディアージュ
少年たちの一夏の冒険を描いたSFファンタジー映画。
VFXが売りだが、ドラマの方もなかなか。by K. Hattori


 夏休みに小さなロボットを拾った小学生たちが、宇宙人たちによる地球破壊計画を打ち砕くというSFアドベンチャー映画。主人公たちが小学生ということもあって、これは明らかに夏休み興行の子供向け映画。日本の子供向け映画は得てして「子供だまし」になってしまうことが多く、子供の付き添いで映画を観せられる大人たちはさぞやウンザリしていることだろう。でもこの映画は、大人も子供も楽しめる良質のファミリー映画に仕上がっていると思う。タイトルの『ジュブナイル』は「少年期の」という意味だそうだが、これは現在少年期真っ盛りの子供たちにとっては等身大のドラマであり、かつて少年(少女)だった大人たちにとっては自分たちの子供時代を懐かしく思い出させてくれるドラマなのだ。

 これがデビュー作となる山崎貴監督は、数多くの映画作品でVFXを担当してきたキャリアの持ち主。今回の映画もCGをふんだんに使ったVFXが売りだが、そればかりを全面に出した映画にはなっていないところが立派。基本的には『スタンド・バイ・ミー』などにも通じる「少年たちの一夏の物語」であり、大きな試練に出会うことで少年たちが成長して行くドラマがメインになっている。脚本は10稿まで書き直したとプレスに載っていたが、その努力のかいあってよくこなれている。導入部でロボットを見つけた少年たちの反応をあまり長々と描かず、「不思議なことに僕たちは昔から友達のような気がしました」というナレーションで処理しているのはうまい割り切りだった。ロボットを前にした戸惑いや子供たちそれぞれの反応の違いなどを長々と書き始めると、それだけで結構時間を食ってしまう。

 もちろん欲を言えばここでは台詞に頼らず、子供たちとロボットの馴れ初めをきちんと描いてほしい。でも映画を観てわかったのは、この監督は子供の芝居の演出が苦手らしいということだ。導入部の子供たちの場面は、台詞のやり取りや物語の運びにかなりギクシャクした部分が見られる。これがこなれてくるのは、天才物理学者役で香取慎吾が登場してから。子供同士で会話をしている場面より、香取慎吾を中心にして会話が進行していく場面の方がずっとノリがいい。(もっともこれは、香取慎吾というタレントのキャラクターかもしれない。)脚本の初期段階ではもっと子供中心の話だったらしいが、これは香取慎吾をからめて大正解。このキャラクターがいないと、特撮だけが目玉の映画になったと思う。彼の存在によって、物語にずっと厚みが出た。

 男の子たちが同級生の女の子にあこがれる気持ちなどが、じつに丁寧に描かれているのもこの映画の魅力。女の子の方がどんどん先に成長してしまい、男の子の方がそれに追いつこうと必死に背伸びしているような感じがよく出てます。エピローグがちょっと長いんだけど、ここにはこの長さが必要なのかもしれない。主人公たちが未来を託してテトラを見送るラストシーンには感動するぞ。エンドクレジットの山下達郎の歌もよい。


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