シーズ・オール・ザット

2000/03/09 松竹試写室
学校で一番さえない女の子をプロムクイーンにするには?
小品ながらあなどれないラブ・コメディ。by K. Hattori


 『ラストサマー』『ラストサマー2』でヒロインの恋人役を演じたフレディ・プリンツJr.主演の学園青春ドラマ。高校で生徒会長も務めるモテモテ男のザックは、ガールフレンドのテイラーにある日突然振られてしまう。彼女は春休みに人気TVドラマの主演俳優ブロックと知り合い、彼とつき合うようになったのだ。彼女を見返すため、何がなんでもプロムの日までに彼女以上の女の子を捜さなければならない。だが学校で一番イケてるテイラーにかなう女の子なんて、どこを探してもいそうにない。「僕とつき合うようになれば、テイラーでなくてもプロムのクイーンになれる!」と豪語したザックは、学校で一番ダサダサのレイニーを6週間でプロムクイーンに出来るかどうか、友人と賭をすることになる。

 基本は『マイ・フェア・レディ』の学園版。ヒギンズ教授が友人との賭で花売り娘のイライザを立派なレディに仕立てたのと同様、ザックも友人との賭でレイニーを校内ナンバーワンの女の子に仕立てる。イライザを飾り立てるのはヒギンズ教授宅のメイドでしたが、テイラーを飾り立てるのはザックの妹。いつしかヒギンズ教授はイライザを愛するようになり、ザックもいつしかレイニーを愛し始める。だが美しくなったイライザには金持ちのぼんぼんが言い寄り、レイニーにも学校で2番目にハンサムな男の子が言い寄ってくる。

 楽しい映画です。僕は大好き。物語や人物配置に新しいところはなく、すべてが「どこかで観たことのあるような話」の連続ですが、逆にそれで安心して観ていられるし、最後まで欲張らないので破綻もない。映画としての新鮮味はないし、スケールも小粒。有名スターも出演していないし、俳優の演技力や監督の独創的演出で唸らせる場面もない。アカデミー賞だのゴールデングローブ賞だのといった賞レースとはまったく無関係の場所にいる映画ですが、僕はこういう映画が大好きなのです。最初から最後までまったくダレることがないエピソード構成と、主役から脇まですべてが的確なキャラクター造形が見事。ザックと父親の関係や、レイニーと家族の関係などを脇のエピソードにして、単なるラブコメディに終わらない物語の膨らみを生み出しています。このあたりは同じ現代版『マイ・フェア・レディ』である『プリティ・ウーマン』が、リチャード・ギアのビジネスの話やジュリア・ロバーツと友人のエピソードをからめてきたのと同じパターンです。いろんな映画から、美味しいところをつまみ食いしているんです。

 全部がパターン通りではあるのですが、2回あるパーティーシーンの面白さ。特にプロムのダンスシーンは圧巻です。最近の映画でここまでノリノリのダンスシーンを観たのは、ダンス映画の『ダンス・ウィズ・ミー』以来ではないだろうか。まったく予期していなかったところに突然こんな場面が登場するのは不意打ちの喜び。このへんからラストまではニコニコしっぱなしで、エピローグの洒落っ気にも舌を巻きました。

(原題:She's All That)


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