ボーン・コレクター

2000/03/09 SPE試写室
連続猟奇殺人の謎を寝たきり警官の名推理が解き明かす。
主演のアンジェリーナ・ジョリーがよい。by K. Hattori


 ジェフリー・ディーヴァーの同名ミステリー小説を、『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』のフィリップ・ノイス監督が映画化。主演はデンゼル・ワシントンだが、見どころはアンジェリーナ・ジョリー扮するヒロインの活躍と成長ぶりだろう。彼女は『マイ・ハート,マイ・ラブ』も公開されるし、今後大きく注目される若手女優だと思う。俳優ジョン・ボイトの娘です。がっちりしたアゴの線などは、父親譲りかもしれない。ちょっと厚ぼったい唇がセクシーです。

 物語は連続猟奇殺人をめぐるミステリー。タクシーに乗ったまま消えた不動産業者が、変死体として発見された。切り取られた指。近くに残されていた謎の遺留品。現場に最初に到着したパトロール警官のアメリアは、的確な判断ですべての証拠を保全する。行方不明になっている被害者の妻も、犯人に捕らえられている可能性が高い。事件はベッドで寝たきりの捜査官、リンカーン・ライムのもとに持ち込まれた。彼は犯罪学者として何冊も著書がある、生きた犯罪データベースのような人物。もとはニューヨーク市警の優秀な警官だったが、捜査中の事故で脊髄を痛め、今は肩から上と指1本しか動かすことが出来ない寝たきりの生活だ。そんな身体のまま捜査の陣頭指揮を執ることになったリンカーンは、若いアメリアを自分の助手に指名する。

 主人公はデンゼル・ワシントン演じるリンカーン・ライムですが、彼はベッドに縛り付けられているので、実際に物語の中を動き回るのはアメリアです。経験のないアメリアは、無線を使って逐一リンカーンから指示と指導を受けて現場検証をする。その中で彼女は自分の中の弱さを克服して行くし、リンカーンも事故以来失いかけていた生の意欲を取り戻していく。ミステリー映画ではあるけれど、これは主人公たちふたりの絆のドラマです。リンカーンが黒人で半身不随のベテラン警官、アメリアが白人の健康的な若い警官という組み合わせにすることで、絶対に普通の恋愛にはなり得ない男と女の関係を作り上げているのが上手い。互いに相手を守り支える存在ですが、その関係は純粋に精神的なものなのです。

 ミステリーとしては後半がやや駆け足で、事件解決の鍵がやけに簡単に見つかったり、犯人の動機と犯行の関係にいまひとつ釈然としない点もある。このあたりは原作できちんと描かれているのかもしれませんが、映画はそこを雰囲気と勢いで押し切っています。前半のゆったりしたテンポを好ましく思っていただけに、終盤の駆け足は少し残念。ここもジトジトジメジメした雰囲気にしてくれると面白かったと思うのですが……。

 登場人物は多いのですが、キャラクターとして立っているのは主演のふたりだけ。他の人物は物語の背景として周囲に溶け込んでいます。それでいながら、マイケル・ルーカーやルイス・ガスマンなど俳優の力で、キャラクターの輪郭だけはハッキリと見せる。このあたりのバランス感覚が通好みの映画かもしれません。

(原題:THE BONE COLLECTOR)


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