ドラえもん
のび太の太陽王伝説

2000/03/07 東宝第1試写室
のび太が古代南米の王子と入れ替わって生活する。
併映の『おばあちゃんの思い出』は泣ける。by K. Hattori


 今年はドラえもん誕生30周年にあたるそうで、それを記念する映画がこれ。劇場版の長編作品としては21作目になるとか。今回は古代南米のマヤやインカ、アステカなどの文明を思わせる「マヤナ国」を舞台に、のび太そっくりのティオ王子の活躍と、彼を助けるのび太やドラえもんたちを描いた冒険活劇。マヤナを危機に陥れる魔女レディナの呪術と、ドラえもんが持ち込んだ22世紀の科学が真っ向からぶつかり合う。

 映画は前半と後半に大きく別れていて、前半はのび太とティオ王子が入れ替わって生活する「王子と乞食」か「ふたりのロッテ」風の物語。王国の危機を救うため厳しい修行をしていたティオ王子は、遠い日本から来たのび太やドラえもんの姿に興味を持ち、「修業と見識を広めるためぜひとも日本へ行きたい」と願う。のび太とティオはうりふたつなので、ふたりは入れ替わってそれぞれの生活を始めるのだ。のび太は王子の贅沢な暮らしに満足し、王子は現代日本のありとあらゆるものに驚く。幼くして父を失い、母親も魔女の呪いで眠らされているティオは、ともするとワガママが目立つ少年だった。だが彼はのび太たちとの交流を通して、人の上に立つ王としての使命と、自分のワガママを押さえる術、目下の者に温かい目を注ぐ姿勢を身につける。型どおりといえばそれまでだけど、まずまず手堅いお話であり、手堅い展開になっている。特別面白くもないけど、1時間半の上映時間中はきちんと楽しめる映画です。

 ただし映画の中で「白雪姫」を持ち出して、無批判に「いいお話でしょ?」と言わせていたのは少々アナクロではなかろうか。今は『スノーホワイト』や『エバー・アフター』の時代です。女の子がお姫様になって、ひたすら王子様の救いを待つという話を受け入れることが、はたして正しいのかどうか。もっともこの点については、映画の最後にひとつの解決法を与えてはいるのですが。

 ここ数年の『ドラえもん』で大人観客の涙腺を緩ませているのは、メインの長編より併映の短編作品だと思う。今回も『おばあちゃんの思い出』という短編では、ポロポロ涙がこぼれます。のび太が小さな頃に亡くなってしまったおばあちゃんを訪ねて、タイムマシンで過去に戻るという物語。「ここで泣かされる」というポイントがわかっていても、そこに来るとやっぱり泣いてしまう。長編版からは藤子・F・不二雄テイストが年々失われているような気がしますが、この短編は原作漫画をほぼ忠実に映像化していることもあり、原作者の精神が一番生々しく息づいているのです。僕にとっても懐かしい世界。多少あざとさも感じますが、素直に感動できます。

 もう1本の併映作品は、劇場オリジナルの短編『ザ・ドラえもんズ』の最新作『ドキドキ機関車大爆走!』。世界征服をたくらむアチモフにエネルギー源を奪われた未来社会は、ドラえもんたちにエネルギーのカプセルを運ぶよう依頼。電気が使えないため小さな機関車にカプセルを乗せて運ぶ。これは単なる時間つぶし映画。


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