キャリー2

2000/02/25 徳間ホール
キング原作の名作『キャリー』に20数年ぶりの続編登場。
続編と言うより、むしろリメイクだ。by K. Hattori


 今でこそ世界的な大ベストセラー作家になったスティーブン・キングだが、デビュー作『キャリー』は出版当時さして話題にならなかった。だがこれをブライアン・デ・パルマ監督が映画化して大ヒットさせ、キングは一躍ベストセラー作家の仲間入りを果たす。1976年のことだ。『キャリー』は青春ホラーの中では古典中の古典。その続編がついに登場した。物語は前作の20年後が舞台。『キャリー』の事件で最後にひとりだけ生き残ったスー・スネルが高校で心理カウンセラーをしているという設定で、一応前作との連続性を保っている。演じているのは前作でも同じ役を演じたエイミー・アーヴィング。映画の中には回想シーンとして『キャリー』のハイライトシーンが幾つか引用されています。

 しかしこの映画、「続編」と言うより「再映画化」と言った方が正しいのではないだろうか? 高校で周囲からイジメられている女子生徒に不思議な能力があるが、周囲の人たちはそれに気づかない。だが陰湿なイジメはエスカレートし、その頂点で彼女の能力が爆発的に解放される。イジメていた生徒たちの集まるパーティー会場は血にまみれ、炎に包まれる……。主人公の名前はキャリーからレイチェルに変わっていますし、性格や服装などもだいぶ違う。でもふたりが母子家庭で育っているのは同じだし、母親が精神を病んでいるのも同じだ。物語の中ではキャリーとレイチェルにさらに強力な共通項を作ってふたりを結びつけていますが、これは映画が『キャリー』の正統な続編であることをアピールしているだけで、本筋とはあまり関係がないのです。

 クライマックスはやはりパーティーの場面ですが、そのディテールや演出は『キャリー』をそのまま踏襲したものだと思います。もっと言えば、ラストシーンまで同じ。ここまで徹底的に前作をなぞってくれると、かえって清々しい気分になります。もちろん映画のタイトルには「キャラクター原案:スティーブン・キング」というクレジットがなされていますが、気になったのは映画版『キャリー』に対する言及がなかったこと。この映画がキングの原作より、デパルマの映画版『キャリー』を下敷きにしているのは明らかです。原作者のキングですらイスから飛び上がったという衝撃的なラストシーンまで引用するからには、映画版に対する何らかの言及があってしかるべきではないだろうか。まあ、観ている人は当然「これは映画版『キャリー』のリメイクだ」とわかってしまうわけですけど、それにしたって……。

 ヒロインのレイチェルを演じたエミリー・バーグルは、舞台経験があるものの、本作が映画デビュー作だという。この映画の欠点は、このヒロインが少しも可愛くないことだね。最初は地味でブスな女の子でもいいんだけど、恋をしてどんどんきれいになっていく過程を描いてほしい。あるいは最後に「思い出の中で美化される」とか。化粧気がないのはいいけれど、眉毛が薄いのは不気味だよなぁ……。塚本監督の『双生児』じゃないんだっての。

(原題:THE RAGE / CARRIE 2)


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