U.M.A
レイク・プラシッド

2000/02/18 東宝東和試写室
アメリカの湖に出現した謎の人食い生物の正体は?
キャスティングが豪華なB級映画。by K. Hattori


 「U.M.A」というのは“Unidentified Mysterious Animal(未確認生物”という意味の造語で、ヒマラヤの雪男やネス湖のネッシーなどを指す言葉だという。もっともこれは“UFO”のように一般的な認知を受けている略称ではなく、日本人の超常現象研究家・南山宏という人物が提唱しているものだそうな。たぶんこの映画がなければ僕が「UMA」という略称を知ることはなかっただろうし、この映画が公開されて1年もたてば、この映画ごと「UMA」も記憶の彼方に遠ざかってしまうだろう。これはそんなタイトルであり、映画である。

 メイン州の“レイク・プラシッド”という小さな湖で、ダイバーの変死事件が起きる。環境調査中の男が水中で何かに襲われ、身体を真っ二つに切断されて死んだのだ。遺体に付着していた巨大な歯は、爬虫類のそれに酷似していた。調査のためニューヨークからやってきた女性研究者は、地元の保安官たちと協力して事件の原因調査に乗り出す。やがてそこに世界的なワニ研究家の男もやって来て、大規模な捕獲作戦が行われるようになる。やがて姿を現した巨大な生物の正体とは……。

 映画の中では巨大生物の正体が巨大なワニだと早々に明らかにされますが、配給元の東宝東和は「巨大なワニじゃ客が呼べない」と判断したのか、これを「U.M.A」と称してます。プレス資料のストーリー部分では、『強大なワニらしき「U.M.A」』『この巨大ワニ=「U.M.A」』『自然の驚異=「U.M.A」』などと「U.M.A」の叩き売り状態。映画の中では「U.M.A」なんて言葉は一度も出てこないんですけどね……。でもこのぐらい徹底して「U.M.A」にこだわってくれると、いっそ潔く思えてしまいます。

 巨大ワニが人を襲うなんてB級素材だから、さぞやチャチな映画なのかと思っていたら、映画の最初にに20世紀フォックスのロゴが出るわ、出演しているのはブリジッド・フォンダとビル・プルマンだわで、映画の枠組みそのものは豪華になってます。話もきちんと組み立てられていて、同じように人間を襲う巨大爬虫類を描いていても『コモド』とは大違い。ただ、だからといってこの映画が面白いかというと、僕はあまり面白さを感じられなかった。これは実際に野生のワニが国内にいるアメリカ人の受け止め方と、ワニと言えば動物園や水族館の水槽の中でしか見たことのない日本人の違いだろうか。

 映画に登場するワニは遺伝子操作で巨大化したのでも、工場廃液の影響で突然変異を起こしたわけではなく、もともと9メートルまで育つ種類です。アメリカ原産ではありませんが、それがどこから来たのかはまったく不明。ここで描かれているのは「人里離れたアメリカの湖なら、こんなワニが育つ余地があるのかも」という幻想です。なぜワニがいるのか理由は問われない。目の前にワニがいるという現実から、すべてが出発している。それがこの映画の面白さでしょう。CGワニ君が大暴れするクライマックスは見応え十分。見せ物映画としては合格です。

(原題:Lake Placid)


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