ショー・ミー・ラブ

2000/02/18 映画美学校試写室
十代の女の子同士の恋をコミカルに描いたスウェーデン映画。
主演ふたりの表情がとにかく素晴らしい。by K. Hattori


 平凡な日常から脱出したいと願う少女たちの心情と、思いがけず芽生えた恋心にうろたえる様子をユーモアたっぷりに描いた青春映画。スウェーデンの30歳の監督ルーカス・ムーディソンの初長編作品で、主演はアレクサンドラ・ダールストレムとレベッカ・リリエベリ。もちろん、監督名も役者の名前も始めて聞くものだ。映画そのものはメッチャクッチャに面白い。1時間29分という短い時間の中で、必要なエピソードだけをきちんと描いて一度も脱線させず、それでいてふっくらと豊かな映画に仕上がっている。これは誰にでもお勧めできます。

 物語の舞台は、スウェーデンの田舎町オーモル。2年前に町の学校に転入してきた16歳のアグネスは、なかなか周囲になじめず親しい友達もいない。アグネスは2歳年下のエリンという少女が大好きになるが、話をするきっかけもつかめない。ところがアグネスの誕生パーティーにどういう気まぐれかエリンがやって来て、ふたりは急に親しくなる。ヒッチハイクでつかまえた車の中で、ふたりはキスをする。これは恋なのか? ところが翌日になると、エリンはアグネスを無視するようになる。それどころかアグネスへの当てつけのように、それまでまったく興味を示さなかった男の子とつき合うようになる。

 十代の少女同士の恋愛が周囲に波紋を広げて行くというラブコメディには『2ガールズ』もあったけど、『ショー・ミー・ラブ』は自分が「男の子より女の子の方が好き」という事実に人生で始めて直面してしまったエリンの気持ちを丁寧に追いかけている点がユニークだった。アグネスを好きだというエリンの気持ちは嘘じゃない。でも彼女はそれが「同性愛=変態」だということに抵抗を感じる。好きになった相手が女の子だなんて、周囲に絶対に言えない。女の子とつき合うことで、エリンはどれだけのものを失うだろうか。彼女は母親に向かって「私、ゲイなんだ」と言ってみる。そしてその直後に、「ウソウソ、冗談よ」と取り消してしまう。エリンの心は揺れ動く。相手がどんなに素敵な女の子だったとしても、女同士でつき合ってすべてをなくすぐらいなら、ウスラ馬鹿の男の子とつき合った方がマシかもしれない。なんとなく周囲の状況に流されて、エリンは年上の男の子とつき合うようになる。

 エリンとアグネスの性格の描き分けが秀逸だし、ふたりが恋に落ちる場面もよかった。好きな人からの電話をそわそわしながら待ったり、電話しようとしたとき近くに家族が来てあわてて切ってしまうなど、共感度の高いエピソードで観客の気持ちを引きつける。最後のオチは『2ガールズ』と同じ。これはこの映画の監督も『2ガールズ』を観ていたってことなのかな? それともたまたま偶然同じ結末になったのか……?

 ザラザラとした質感の画面が臨場感を生み、主人公たちの喜怒哀楽にすっかり感情移入してしまいます。ふたりとも特別な美少女ではなく、「ちょっと可愛い」ぐらいの庶民性があって、それもちょうどいい感じでした。

(原題:Fucking Amal)


ホームページ
ホームページへ