ハッピー

2000/02/09 徳間ホール
中途失明した女性と盲導犬の交流を描いた感動のドラマ。
昨年放送された連続ドラマを1時間半に再編集。by K. Hattori


 昨年4月から6月にかけてテレビ東京系で放送された「ハッピー 愛と感動の物語」を、95分に再編集してキネコした長編劇映画。優れたTVドラマをホール上映などの形で紹介しているT&Kテレビルム(http://www.tk-telefilm.co.jp/)が、日本語字幕と副音声を付けて全国で上映していくそうだ。ビデオ撮りのTVドラマをキネコしているので、画質はフィルムに比べると当然悪い。今回はキネコの質が悪かったのか、画面も妙に暗い。しかしドラマの内容がきちんとしているので、それはすぐに気にならなくなった。映画が好きな人はTVドラマをちょっと見下すようなところがあるんだけど、こういうものを観せられてしまうと、最近の若い映画監督が作る自己満足映画より、TVドラマの方がよほど良質で完成度の高い作品を作っていることがよくわかる。TVを見ていた人がこの映画を観ると、内容があまりにもダイジェストすぎて、TVで感動を与えてくれたエピソードが割愛されていることにショックを受けるのかもしれない。TV版を見ていない僕が観ても、割愛されたエピソードの痕跡はすぐにわかってしまった。でもそれが、作品の本質的な部分を傷つける傷にはなっているとは思えない。僕は映画の幾つかの場面で感動してポロポロ涙がこぼれてしまいました。

 事故で中途失明した若い女性が、“ハッピー”という名の盲導犬と出会うことで自立し、愛する人と出会って結ばれるまでを描いたドラマです。主人公・香織を演じているのは高岡早紀。彼女は父親とスキー旅行に出かけてゲレンデで転倒し、22歳の若さで失明してしまう。持ち前のがんばりで、白い杖を突きながら日常生活全般をそつなくこなせるようになるまでに1年。しかしその間に、それまでつき合っていた恋人は離れて行ってしまう……。ここまでの話の組立がまず上手い。偶然の事故の結果で失明したとはいえ、彼女は恋人の誘いを断って父親とスキー旅行に出かけている。父親のスキーにトラブルが発生したとき、「どうせだから」とひとりで上級コースに挑戦して事故に遭っている。彼女は失明した不幸を嘆いているのではなく、「もしもあの時……」という後悔にさいなまれるのです。でも彼女のこうした後ろ向きの気持ちは、ハッピーと出会うことで大きく変わる。

 すごくいい映画なのに、観ていて「TVドラマだなぁ」と感じてしまう瞬間が1ヶ所だけあった。それは主人公が犬を捨てた少女に向かって「大事なものは手放しちゃいけないのよ」と言う場面。少女への言葉は、好きな男性からの愛の告白を拒んでしまった自分自身への言葉です。この場面はそれだけで、彼女の言葉の二重の意味を観客に悟らせなければならない。この場面は半ばそれに成功しています。でも作り手はそれだけでは自信がないのか、玄関先で短い回想シーンなどを使って、言葉の二重の意味を解説してしまう。よりわかりやすくという気持ちはわかるけど、ここはサービス過剰でした。もう少し控えめにした方が感動的だと思う。


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