コモド

2000/02/02 イマジカ第1試写室
巨大化したオオトカゲが人間を食おうと大群を率いて大暴れ。
映画のあら探しを楽しむB級動物パニック映画。by K. Hattori


 工場廃液の影響で異常に巨大化したコモドオオトカゲが孤島で繁殖し、島を訪れていた人々を次々に襲う。古典的な動物パニック映画で、当然低予算。知っている俳優はまったく登場しない。監督は特撮マン出身のマイケル・ランティエリ。映画の内容はデタラメもいいところだが、びっくり箱的なショック演出は定石通りに決まり、最初からB級映画だと割り切っていればそこそこ楽しめる。配給はアミューズだが、宣伝のタッチは往年の東宝東和のイロモノ映画タッチになっている。最新のデジタル音響(ドルビーデジタル、dts、SDDS)は、その名も「迫りくる脅威の【コモド・サウンド】方式!!」と名付けられ、キャッチコピーは「“奴ら”は群れで食いまくる!」と超大げさ。宣伝用のイラストも大作パニック映画風でカッコいいぞ。映画秘宝の読者が最初からバカな映画と承知の上で、シャレで観に行く映画でしょう。これは昔の見せ物小屋と同じ。わざわざ呼び声に騙されに行って、やっぱり騙されたと安心するタイプの映画。そういう風に考えると、これは突っ込みどころが満載で、映画の欠点もその原因もすごくよくわかってしまう素晴らしい作品です。

 おそらくこの映画、最初の企画段階ではトカゲが巨大化していなかったのだと思う。冒頭に「工場廃液が原因で」などと書きましたが、じつは映画の中でトカゲが巨大化した原因については一言も触れられていないのです。とにかくこれは保護動物のコモドオオトカゲで、それが石油工場による環境破壊で水源が汚染されたことから食糧不足になり、人間を襲い始めるという話らしい。でもさ、体長6メートルもあるオオトカゲがうじゃうじゃ生息している島で、もともとそのトカゲは何を食って生きてたんだ? こんなこと、あり得っこないんです。トカゲが巨大化したのは突然変異でも何でもなくて、単に映画としてその方が見栄えがするからだと思う。コモドオオトカゲは普段から生きたシカやサルなどの大型哺乳類を襲って主食にしている獰猛な動物なんだから、それが人間を襲い始めたらそれだけで十分に恐い。でも映像化する場合、トカゲの体長が3メートルだろうが6メートルだろうが製作コストは同じだから、迫力のある6メートルにしちゃっただけなんじゃないのかな。

 この映画の中では石油会社が悪役になっているんだけど、最後に会社の重役が島を訪れる理由もよくわからないし、それよりよくわからないのは彼らが島に残ってどうなったのかをまったく描いていない点。本当なら島に取り残された悪党どもが、オオトカゲに食って食って食いまくられるところがカタルシスになると思うんだけど、そのシーンは一切なし。なんだか歯切れの悪いエンディングですが、これは多分、ここまで作って予算がショートしたんじゃないかな。エンディングも取って付けたようで、いかにも間に合わせでバタバタと物語を店じまいさせてしまったように見える。

 何にせよ、いろいろと楽しめる映画です。

(原題:KOMODO)


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