13ウォーリアーズ

2000/01/25 GAGA試写室
中世期の北欧を舞台にしたバイキング版『七人の侍』。
戦闘シーンはかなり迫力がある。by K. Hattori


 マイケル・クライトンの「北人伝説」を、ジョン・マクティアナン監督が映画化。今から約1千年前、北欧のバイキングたちは人口増加にともなってヨーロッパ各地へと侵入を開始する。こうして第二の民族の大移動が起こり、イギリスやフランスなどヨーロッパ各地にバイキングによる王朝が作られることになった。その頃の北欧では部族同士の血で血を洗う勢力争いがあり、それに破れた部族たちがヨーロッパへと脱出したのだろう。脱出した部族たちは上陸先のヨーロッパをあっという間に制圧してしまうのだから、ヨーロッパの基準で言えばものすごく強力な軍勢だったはずだ。その超強力軍隊が北欧のレベルでは敗残兵なんだから、当時の北欧でどれほど過酷な戦いが行われていたかは想像に難くない。

 物語の主人公はアラブの詩人、アハメッド・イブン・ファハラン。彼は大使として赴任した辺境の地でバイキングの傭兵たちと出会うが、ちょうどそこに、彼らの故郷が外敵の危機にさらされているという知らせが届く。巫女の託宣によって13人の戦士が選ばれるが、アハメッドもそのひとりとして選ばれてしまう。彼は嫌々ながら彼らに従がい、遠い北欧の森へと出向くことになる。そこではバイキングの部族たちが、森の中から霧と共に現れる“ヴェンドル”という魔物に苦しめられていた。

 原題は『13人目の戦士』で、言うまでもなくこれは主人公アハメッドのこと。千年前の北欧という異世界の案内人として、当時世界一の文明人だったアラブ人の視点を借りる仕掛けになっている。文明の地から異境の地へという移動は、灼熱の太陽が照りつける砂漠と、霧が漂いしばしば大雨が降る森林地帯の対比によって強調される。主人公の移動によって、観客も千年の時を経てこの映画の世界にすっぽりと入り込むことができる。

 物語の歴史的背景はともかく、映画の狙いは『七人の侍』そのもの。要塞化する村。村人と傭兵たちが一体となった戦闘シーン。地響きを立てて走り抜ける騎馬武者たちの群。そして土砂降りの雨の中で始まる大規模な戦闘。山塞の襲撃シーンもあるし、そこで仲間のひとりが命を落とすのも同じ。主人公の位置づけは木村功演じる勝四郎で、彼は戦闘の中で夢見がちな詩人から一人前の男へと成長していく。最初の戦闘の後、敵を求めて主人公が闇雲に刀を振るい続ける場面は『七人の侍』のラストで勝四郎が泣きながら刀を振る場面と同じだし、村の娘と「おらたち死ぬんだべ?」(←字幕は標準語です)という会話をしたあとセックスするのも同じ。この場面なんて、ふたりのバックに大きなかがり火があるのまで『七人の侍』と同じだよ。数ある『七人の侍』のコピー映画の中でも、この映画はスケールと迫力で、かなり本家に迫る出来映えになっていると思います。

 ただ、ドラマの組立がなぁ……。13人の戦士たちの個性がまったく見えてこないので、生死を共にした男たちの絆がまったく見えない。もうちょっとエピソードを整理して、人物にスポットを当ててほしかった。

(原題:THE 13TH WARRIOR)


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