美少年の恋

2000/01/17 TCC試写室
香港の若手スターが出演する同性愛映画。泣けました!
恋する気持ちに男も女もないのです。by K. Hattori


 香港の若いタレントが大勢出演した、美少年同性愛ものの1本。監督はヨン・ファン。プロデューサーは『君のいた永遠(とき)』のシルビア・チャン。出演はスティーブン・フォン、ダニエル・ウー、ジェイソン・ツァン、テレンス・イン、スー・チーなど。ナレーターとしてブリジット・リンがノークレジットで参加している。原作は監督が台湾で発表した短編小説「中南灣」。映画のタイトルに『美少年の恋 bishonen......』と日本語が出てきて面食らうが、これは日本独自のタイトルではなく、原題が日本語なのだという。香港では今、日本語がすごくオシャレなんだそうな……。本当かね?

 物語の舞台は、香港にあるゲイバー兼デートクラブ“中南湾”。訪れた客はここで働く美少年たちを店外デートに連れ出し、常連客はお気に入りの少年を電話で部屋やホテルに呼び出すことができる。主人公のジェットは中南湾で働く売れっ子のゲイボーイ。彼はある日、街で出会ったひとりの青年に一目惚れする。数日後、彼は街でひとりの若い警官に声をかけられる。その警官サムこそ、ジェットが一目惚れした青年だった。ふたりは急速に親しくなり、ジェットはサムが両親と暮らす自宅にも出入りするようになるが、彼は自分がゲイであることをサムに打ち明けられない。だがサムもまた、自分自身の過去をジェットに隠していた……。

 同性愛を扱った映画ではあるが、恋することの喜びと、自分の気持ちを打ち明けられない苦しさを丁寧に描いた、極上のラブストーリーになっている。大好きな人と親友になっても、そこからあと一歩踏み越えて恋人になることができないもどかしさ。自分の気持ちを打ち明けた途端、今まで築いてきた関係が壊れてしまうのではないかという恐れ。好きな人と一緒にいられる楽しさの中で、愛する人と一体になりたいという気持ちがどんどん膨らんで、その気持ちに押しつぶされ息が詰まりそうになる感覚。そんな恋する気持ちは、男でも女でも、相手が異性であっても同性であっても変わらないのかもしれない。

 僕はこの映画を観ていて、途中から泣きべそモードに突入してしまった。サムが交際中のアチンを裏切って歌手のたまごと浮気をするくだりで、涙がまぶたの裏側までせり出してきてしまったのだ。どんなに自分が愛されていても、どんなにその相手を大切に思っていても、別の人を好きになってしまう気持ちは抑えられない。恋人の気持ちが別の人に傾いていることを知りつつ、それでも恋人に精一杯つくそうとする気持ちも泣けてくる。どれだけつくしても、一度離れてしまった気持ちは取り戻せない。それでも人は愛することをやめない。サムに金の入った封筒を渡すときの、アチンの視線が悲しい。

 出演している若い俳優たちは、これから香港映画を引っ張っていく若いスターたち。やはりヤングスター総出演の映画『ジェネックス・コップ』と重なり合うキャストも多い。中国に返還された後も、香港映画界はまだまだ元気だと痛感させられる1本です。

(原題:美少年の恋 bishonen......)


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